土銀
□青いんです
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〜〜現在
ピ…ピ。ピピピピ。ピピピピ。ピピピピ。
鳴り響くアラーム音に、銀八は眠りの世界から引き摺り出された。
「うっ、う〜ん」
目を閉じたまま、ベッドヘッドのボードに手を伸ばし、アラーム音を発している時計を探り当てる。
のっそりと起き上がり、
「くっ……うぅ〜〜ッ!!」
両腕を思いっきり伸ばして大あくびをした。
シンっと静まり返る室内。
時折り、マンション内のどこかの部屋からバタバタ子供が駆ける足音やドアを開閉させる音が小さく聞こえてくる。
「夢か……」
厳密に言えば夢ではない。随分と昔に実際にあったことだ。
『高杉が日本に帰国したらしいんじゃ』
昨夜、坂本から聞かされたのは、
小学校入学から大学2年の冬まで、共に過ごしてきた相手である高杉が日本に帰国したというものだった。
ある日、何も言わずに、銀八の前から消えてしまった人物。
『おんしらが付き合うておったのは随分と前のことじゃし、今のおんしはワシの目から見ても落ち着いちょる。 黙っておくつもりじゃったが、高杉がおんしを捜しとるらしいんじゃ。一応知らせといた方がエエじゃろ思うての』
高校からの付き合いである坂本は、銀八とは何となく気の合う人物で、銀八と高杉の関係を正しく知っている一人である。
「アレだな。こんな夢見たのは坂本が元凶だな」
くだらない気を回して、下らない情報を聞かせた坂本の所為で、大昔のことを夢で見てしまったのだろう。
懐かしい、なんて思わないが、当時の自分の青さに笑える。
(あん時は、本気で惚れてたもんなぁ)
今はどうして好きだったのか全く覚えてないが……。
捜している…というのが本当なら迷惑な話だが、アイツも昔を懐かしむほど暇じゃないだろうと、深く考えるのを止めた銀八だった。