終焉の鬼
□episode01.
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なれなれしく声をかけられたことに対する嫌気を隠しながら、深雪は頭を下げる。
従者の二人も深雪の行動を見て慌てて頭を下げた。
無言で頭を下げ続ける深雪たちを見て、真は首を傾げた。
「おはよう……とか言ってくれないの?」
まあ、妥当な反応だろう。
一条を知る普通の生徒ならば”おはようございます”と声をかけるはずだ。
問題は、深雪の家柄にあるのだ。
「……一条様に声をかけるどころか、視界に入ることも失礼だと言われていますので」
深雪にも一条の血は濃く流れている。
しかし氏を持たない分家であるというだけで、立場は天と地の差だ。
深雪が、今まで、そしてこれから辿る道が茨であることは火を見るより明らかである。
真はきょとんとしてから、クスクスと笑った。
「頭上げてよ。あんな固い大人たちの言いなりになることないよ」
真は少し頭を上げた深雪に笑いかける。
「俺に礼儀とかいらないから。さ、行こう?」
歩き出した真の背中を一瞬見つめ、深雪は花とかんなを促して真の後を歩いた。