アナタの名前をこの声で

□第3話
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異常な程の喉の渇きを感じ、リサは目を覚ました。------暗い部屋… ビクゥッ!! 体が震える。前と同じ…何も変わらない。15年以上を過ごしたあの部屋とは見た目が僅かに違うが、コンクリートの壁に鉄の檻など、造りは全くと言っていいほど同じだった。
起き上がったリサの隣にルファが横たわっている。荒い息をこぼしているのは、まだ体内に毒が残っているから。ルファ程ではないが、リサが感じるこの喉の渇きも、毒によって喉の細胞がやられてしまっていることが理由だろう。
リサは今さら、自分が死んでいなかったことに気が付いた。別に急ぎ死にたいわけではない。ただ、牢獄の中で一生を過ごすよりは死んだ方がマシ、それだけのことだ。また、気持ち関係なく、ルファが死ぬ時は自分の死ぬ時だ。彼と出会ってから今まで、ルファの痛みはリサの痛み、リサの痛みはルファの痛みと言ったふうに、二人で痛みも、悲しみも、苦しみも、恐ろしさも、喜びも、嬉しさも、全て分かち合ってきた。ならば、死をも共有するのも当たり前のことだろう。リサはルファ無しでは生きられないのだから。
「リ、サ…」
ルファが意識を取り戻した。伸ばされた手を優しく包む。
「リサ…大丈夫か…?」
ルファは優しい。そよ風よりも、星の瞬きよりもずっと優しい。 頷くとルファの顔に笑みが浮かんだ。それにつられるように、リサの頬の筋肉も少し緩む。こんな些細なことが二人にとっての幸せだ。今生きていることだって、当たり前のことではないのだ。
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