アナタの名前をこの声で
□第8話
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「はぁ〜〜〜〜〜。」
シャワーを浴び終えたカイザは、髪もろくに拭かずにベッドに転がった。
鮮やかな模様の描かれた天井を睨む。…だが、カイザの瞳にはそんな模様など映っていなかった。
鮮烈に浮かび上がるのは足に、肩に、そして腹に叩き込まれた一本の剣(ツルギ)。
自分の身体がスピードについていけないなど初めてのことだった。
刃を交えることすらままならなかったのだ。ましてやその剣撃を交わすなど…。
おかげで誰が見ても驚くくらい痣だらけだ。
体中を鈍痛が駆け巡っていて、動く気にもならない。
コンコンッ
不意に扉がノックされた。
今は誰とも会いたくない気分だったが、急を要する連絡かもしれないと思い、仕方なく声だけで答えた。
「なんだ。」
「あたしよ、カイザ。」
声は姉のものだった。
「姉上?…何か用か?」
「そう用よ、用。だから早く開けてちょうだい。」
「今は誰とも会いたくないんだ。後にしてくれ。」
カイザは率直に自分の気持ちを言う。ごまかしたり、変に理由を付けたりなど、曲がったことは嫌いなたちなのだ。