企画こーなぁ

□ひよこの眼-追想-
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亜紀に自分の思いを伝えてからまだそれほど時間は経っていない。


あれから話に花が咲いてしまって、もう辺りは薄暗くなり始めている。

今日1日のさよならを言い、帰路に立って15分。

右肩はだいぶ冷えてしまったが、右手の温もりは未だ消えていなかった。

―――あったかい。


最後にそう感じたのは、果たしていつだっただろうか。
永いこと、そんな感情なんて忘れていた気がする。


冷えきった自分に、幹生は冷笑した。



なぜ、自分ばかり、こんなにも不幸な人生を歩まなければならない?

生を受け、15年間、なんどそう問うただろう。

どんなに考えても導かれない答えに、幹生はそろそろ苛立ちさえ感じ始めていた。


そんな矢先の、一つの小さな出会い。

最初は特別意識もしなかった。
いつ、どうなるか分からない身だ。
特別な友達なんていらなかった。


でも、亜紀の瞳は幹生を離してはくれなかった。


そして、話を交わす度に、
他愛もない話が、
笑いが、
肩を並べる帰り道が、
こんなにも楽しい事を知った。
それは、いつの間にか大切な時間となった。


あんなに長い間、他人に触れ続けたことは初めてで、正直緊張した。
幸せだった。
今までの不幸が全て排泄されたかのようだった。


「ありがとう、亜紀。」

面と向かってはどうしても言えなかった。
彼女にはその意味が分かってしまいそうで、少し怖かったのだ。


幹生は温もりを握り締めると、帰りを急いだ。




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