終焉の鬼

□episode06.
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学生五人での模擬戦闘訓練は昨日が最後だった。

チームを組んで一週間。
模擬戦結果は11戦3勝6敗2分。

結果も戦闘内容も最悪だった。

この模擬戦は強さを図るわけではない。ただ、敵の数が多く、チーム戦をいかに組み立てるかを図るものだ。

チームワークのなさは明らかだった。


これから本部隊と合流する。
結果は本部隊の方にも伝わっている。
合流許可が下りない可能性も少なからずあった。


「なあ深雪、俺たち出撃できると思うか?」

「どうだろうな」


確かに、戦力では他より秀でている。
その戦力を仲間同士で殺しあっているのが今の状態だ。


深雪は、本部隊との合流予定である部屋の戸を叩いた。


「学生第15班、到着しました」

「入れ」


低い声に誘われ、深雪は扉を開く。


「失礼します!」


敬礼をし、部屋に踏み込もうとしたときだった。


左右から殺気と刀が迫る。

キィンと、即座に反応し、刀で受け止めたのは深雪と真だった。

かんなも少し遅れたものの、反応し、短剣の柄に手をかけている。


「お前たちの班は遊びに来たのか」


中心に仁王立ちする大柄の男、隊長の道善雄山(ドウゼン ユウザン)がうなるように言葉を発した。

刀が引かれたため、深雪たちも刀をしまう。


「後ろの二人、お前たちはこの部隊にはいらん。立ち去れ」


あまりの迫力に花と衣緒は顔さえあげられずにいた。


「僭越ながら」


深雪は一歩前に出て道善と真っ直ぐ向かい合う。


「彼女らは第15班の大事な戦力です。簡単に外すことはできません」


道善は深雪をじっくり観察してから口を開いた。


「お前がリーダーか」

「はい」

「なぜその者たちを選んだ。殺したいのか」


刺さるような言葉だった。
しかしその真意は痛いほどに分かる。


「いえ。全員で帰還します」

「模擬戦も勝てない、殺気にも反応できないその二人を連れてか」

「…」

「わたしっ!」


花が急に叫んだ。


「私は、反応も遅くて、強いわけでもありません。でも…戦わせてください!一番技術で劣るなら、一番頭を働かせます!私が作戦を立てます!」


道善は黙ったままこちらを見つめている。

花に背を押されたように衣緒が一歩前に出る。


「私も!負けるつもりはありません!七宮の誇りにかけて、この大薙刀で皆の背を守ります!」


深雪は真に視線を送った。
真が一歩前に出、深雪と並ぶ。


「俺たちは5人で第15班です」


彼にしては珍しくまじめな表情だった。


「敬礼っ」


深雪は号令をかけた。


「学生第15班参りました!」


言葉だけで、気持ちだけで認められるとは思っていない。
結果も出ていないのだ。

しかし、チームとしての意識はどこか変わった気がした。


道善が一歩前に出る。


「出撃は翌6時だ。俺たちはまだお前たちを認めることはできない。…これから指示を出す。その指示に従い、翌5時にこの場所に集合しろ」

「はいっ」

「まず深雪と一条真、お前たちはここに残れ。詳しい指示は後で出す」

「はい」


深雪と真はそろって敬礼した。


「次、城咲かんな」

「はい」

「お前は副隊長の佐崎宗一郎(ササキ ソウイチロウ)と別室で訓練だ」

「よろしく」

「お願いします」


かんながぺこりと頭を下げる。


「最後に木崎花と七宮衣緒は、高篠凛子(タカシノ リンコ)と三人で風呂入って来い。」

「え?」

「え、じゃない、ほらいくぞ」


疑問符を浮かべるもむなしく、二人は背中を押されて部屋を出ていった。

真がふふふと笑う。


「深雪様、また後ほど」


かんなも部屋を出た。


三人になった部屋で、道善と深雪、真は向かい合う。

道善はにっかり笑うと、一本手を叩いた。


「さあ、俺たちも始めるか」
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