悪魔による快楽殺人

□覚醒の儀
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江戸城の脇に止められた篭の中に引き摺り込まれ

気が付けば、涙が自然と毀れて、息が出来なくて




呼吸が浅く浅く繰り返されている





がたがたと震える俺の肩に感じたのは





今まで感じたことも想像したこともない痛み






激痛。


声になりきれない叫び

耳を、鼓膜を、脳を壊すような悲鳴

裏返った悲惨な声


歯が喰い込む、膚が裂け肉が抉られ、骨が砕ける




ごとりと落ちたは俺の左腕


意識は、落ちた。
















目覚めたら、洋館の一室に



天蓋のある綺麗なベッド


ほんのりと漂う薔薇の香と煙の匂い


聞こえたのは鎖が引き摺られて立った鈍い音

行く先には彼が居た




俺を壊した犯人。




名前なんか知らない



ただ、声が格好いいとしか思えないこの男





『よう。お前、悪魔なんだってな?』



唐突に付き付けられた真実









俺が



フランスを追われた理由







魔女狩りが終わり、一掃されたと思われていた


そのはずの悪魔は酷く扱われた


魔界での所業はもう諦めが付いたが


人界でもと思うと腹が立つ





引き千切られた腕に唯一残る刻印


秘密裏に自分でも隠していたこれ





親父との唯一の約束





それを解くとお前は壊れる。だから、やめてくれ


怯えながらそういった












解いて。しまおう、か?



















『ね、ねぇ?…俺を虐めるのそんな楽しい?』


9歳の少年は、酷く残酷に微笑んだ









これが、俺の第二幕








その喜劇の始まり










始まりの鐘は、俺の悲鳴だったけどさ
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