†相棒時代(秋桜)†

□いつかのメリークリスマス
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クリスマスというのはいまいちぴんとこない。

イベントとして認知はしているのだが、じゃあなんでやるのだと聞かれると正直よくわからない。
コイビト同士のイベントであるようだし本人たちが楽しいならいいんじゃないかと思う。
まぁ、自分にはどうでもいいことだが。










いつもの如く高い位置から紅茶を注ぐ杉下右京を尻目に亀山薫はそっとため息をつく。
昨日は美和子とちょっとした喧嘩があり、一応仲直りはしたのだが…
まだ不機嫌な美和子をどうやってご機嫌をとるか、頭を抱えている最中だ。

折しも季節はクリスマスが間近だ。
街角には恋人があふれている。今朝もクリスマス一色に染まるまちを見ながら出勤しながら、やはり早めのクリスマスプレゼントを奮発して渡してしまうべきだろうか?
などと考えていた。
そんな悩める夫・薫を後目に元夫で独身貴族な右京は素知らぬ顔でモーニングティーをお楽しみだ。


「いいですよね右京さんは…まぁ言ってもしかたないですけど」
ため息をつく亀山に
右京はティーカップを軽く持ち上げて言った。
「君はわかりやすいですねぇ。さしずめ美和子さんとたいしたことでもないような件で喧嘩でもしたのでしょう?」

その言葉に薫はげんなりとした顔をする。
杉下右京と相棒をくんでから久しいがその物言いは時々(今回のように)カチンとくることがある。

「いや仲直りはしたんですけどね…」

確かにおっしゃるとおりですが!!
見透かされたような物言いがちょっとしゃくに障るのでそう言い返す。
「では仲直りになにかプレゼントでもと思っていたところでしょうか。君は女性へのプレゼントには疎そうですから頭を抱えていたわけですね」
遠慮のない言い方は相変わらずだが、特に後半がひでぇ。と内心薫は思う。
遠慮なしに言うのは右京らしさなのか、それとも薫だからなのかはわからない。いずれにしても図星なので言い返せない薫は弱々しい抵抗してみる。
「右京さんひどいですよそんなー…まぁ…そうなんですけどね…」
結局そう言わざるを得ないのだが。
「右京さんはたまきさんと喧嘩したときにはどうしてたんスか?」
ふとそう思ったので聞いてみる。

たまきさんは以前なぜ結婚したのかと問われて「難解なひとでしたから」と謎の回答をしている。相棒として仕事をしていても大変なのだから夫婦ならなおさら苦労があったのではと思う。
まーこの人の事だからはぐらかされるに違いないが。
「君のように些細なことで喧嘩はありませんでしたよ」
意外とまともな回答がかえってきた。
たまきさんは大人だったんだなぁと改めて思う薫であった。






「今夜は花の里に行きませんか」
定時で仕事が終わり、身支度をしながら言いよどむ薫の言葉がでるより早く、右京からそんな誘いがあった。
おそらく彼が美和子のことでまだ悩んでいると予想をしたのだろう。

「はいっ」
渡りに船とばかりに薫は頷いた。正直一人で悩んでも仕方ないので大人の女性にアドバイスを貰おうと考えていたのだ。
こういうときの右京は優しいと思うのだが…事件になると融通きかないのが「悪い癖」だ。
そんなことを考えていると美和子から、今日は夕食を外で食べるとメールが着ていた。ちょうど良い。
二人は花の里へ向かった。





「あらいらっしゃい」
優しく迎えてくれる花の里の女将たまきはいつも着物をすてきに着こなす女性である。
彼女が杉下右京の妻だったという事実もさることながら多趣味であらゆる方面の知識も豊富であることも、驚かされる事の一つである。
しかも割とはやりものには敏感なところは女性ならではだと思う。
美和子も彼女のはやりものセンサーにはこっそり一目おいているぐらいだ。



そんな彼女に尋ねたならばきっと女性目線のアドバイスをくれるはず!薫は大いに期待して花の里への道を急いだ。
「そんなにあわてなくてもたまきさんは逃げませんよ。今日は定休日でもありませんし」
右京がちゃかすように言うが薫は気にしない。とりあえず突破口が見えた気がしたからだ。
これで美和子ともきちんと仲直りできそうだ。








花の里に着いた二人はいつものようにのれんをくぐり…


カウンターに予想外の先客がいたことに驚く。
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