†相棒時代(秋桜)†

□いつかのメリークリスマス
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「たまきさんよくつづきましたよねぇ…右京さんとの結婚生活」
亀山美和子はため息混じりにつぶやいた。
お昼の時間が合いたのでランチはいかがとたまきを誘ってみたところ、ちょうど空いていたらしく二つ返事で話がまとまり近場のカフェで落ち合うことに。
そして現在に至るわけだ。



美和子の前には薄桃色の着物を着こなしたたまきが優雅に食後のコーヒーを飲んでいる。
そんな彼女があの杉下右京という「難解な」夫を持っていたとは思えない。
美しい年の取り方をしていると思う。

うふふとたまきは笑ったがなにも言わなかった。




今はこうして別々の道を歩んでいるのだから、なんとなく想像は付くがさぞ大変だったことだろう。
考え込んでいた美和子に、たまきがいった。
「亀山さんもよくがんばってると思いますよ。美和子さんのことも大事に思ってるんでしょう。でもきっと不器用なんでしょうね。意地っ張りなところもじゃましてるんじゃないかしら?でもね、夫婦なんて、どれだけ相手を許せるかじゃないかしら?」
そうなのかもしれない。
ささいなことで喧嘩はするが結局なかおりはするし、ある意味コミュニケーションツールになっている気がする。
「男の人には子供みたいなところがあるから、しかたないわよねって…まぁさすがにそれではカバー出来なくなったからいまこうしているんだけど」
たまきはいたずらっぽく笑った。
「いや、右京さんはたぶん特に大変だと思います」
美和子は思わず突っ込んだ。
たまきはうふふと笑って、
「多分ね、女はひろーい心で見てあげないといけないんじゃないかしら?それが夫婦円満の秘訣かもしれないわね?」
それからしばらくたまきとはなしていたが、最近の流行ものなどの別の話になり、右京と夫婦だった頃の話はそれまでとなった。





「…そろそろ仕事に戻らなきゃ」
と美和子が言うと、たまきも、
「じゃあそろそろ私も…」
といいかけて、
「あ、晩ご飯良かったらお店に来る?」
と、意外なお誘いがあった。
「ちょっとご飯さぼっても文句はいえないわよね」
いたずらっぽくたまきは笑う。
一晩くらいお灸を据える意味でさぼってもいいかな?と美和子は考えてあっさりOKした。











ある意味たまきさんは策士なのではと思う美和子であった。
仕事を早々に切り上げ、花の里に向かう。さすがに冬なので日が落ちるのも早い。
冬空は真っ暗だが町の中はクリスマス一色で、きらびやかなネオンが美しく町を彩っている。






気が付くとあたりにはカップルだらけで美和子は驚く。
と同時に気恥ずかしい。

いちゃこらしやがって、目のやり場に困るじゃないの。

そんなことを考えながら頭の片隅によぎる事は。



薫ちゃんとああしていちゃついていたのはいつぐらいまでだったろうか。




そして、戻ってこいと言われた時を思い出す。




そうだ。




あれもこんな時期だった。
子供っぽいくせに変なプライドが高くて正義感の強い奴。
懐が広いんだか狭いんだかよくわからないときがあるけれど、なんだかんだで好きなのだ。
この先も、ずっと。






そんなことをつらつらと考えながら花の里についた。
今夜うちに帰ったら仲直りしようと思ったが、たまきに誘われた事もあり、薫には外で食事をとってくるからとメールだけうつ。
たまきは温かく迎えてくれた。

「いらっしゃい」
「ありがとうございます…まずビールください」
適当に注文していると、店の戸が開く音がした。
なにげに目をやって美和子はちょっとびっくりするが、考えてみれば彼らが来る行きつけの店などここしか考えられないと思い苦笑いしながら来客者に言った。





「いらっしゃい、薫ちゃん、右京さんもお疲れさまです」









驚く薫を後目に右京が軽くほほえむ。
「おや美和子さん、奇遇ですねぇ」
美和子も笑う。
「たまたま仕事が早く終わりまして」

驚いていてどう反応して良いかわからない薫は戸惑っているのがありありとわかる。
「だっておまえ外で食事って…」
美和子はぽんぽんと薫の肩をかるくたたいて言う。
「まぁ良いじゃない。さあ座った座った!!」
まだ納得行かないという表情の薫に美和子は言った。
「昨日はごめんね、私がわるかったよ…大人げなく喧嘩して…ちゃんと仲直りしよう?」
そして右手を差し出す。
「え?」
訳が分からないと言うように、薫がその右手を凝視する。




右京がつぶやくように言った。
「せっかくのチャンスです。仲直りしてはどうですか?亀山君」
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