scarlet
□だから、俺にしなよ?
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※ジェセブ前提シリセブです。
不運だったと言えば不運だったのだ。
今日は朝から調子が良くなかった。
教科書は寮に置いて来るし、借りたかった本は借りられてしまったし…。
何より、僕は僕に愛を囁く奴の浮気現場に今日だけで三回目にしてしまった。
三回とも向こうは此方に気づかなかったらしい。
奴から聞こえたのは僕への謝罪の言葉はなく変わりに、信用出来ない愛の言葉。
僕は限界だったのかもしれない。
夜、寮を抜け出すと誰もいない空き教室に向かった。
夜だと言うのに月の光が輝いていて明るい。
窓側の椅子に座り窓を開ける。
月は真ん丸く綺麗だった。程好い風が入って来て何時までもこのままだと思わせてくれる。
後ろから誰かが入って来た。
僕は、動きたくなかったのでそのまま月を見ていた。
「だから、言っただろう?彼奴は止めとけって…。」
後ろからの声に予測はしていたものの、大袈裟に驚いてしまった。
振り替えると、そこには適当な机の上に座っているブラックがいた。
ブラックは此方を真剣な目で見ていた。
ブラックが言いたいことは何となく分かった。
彼は、僕とポッターが付き合い出した時から『あんな奴、別れちまえよ。』とポッターに言っていた。
でも、此は僕への優しさだと最近気付いていた。
彼は気付いて居たんだ。なんだかんだ言ってポッターの事が好きな僕に…。そして、僕がどんなことでも結局許してしまうことに…。
ブラックはゆっくり此方に向かって来て、僕の目の前に立った。
「泣けよ。辛いだろ。」
僕は、眼から溢れ出る水を抑える事が出来なかった。
わかっていた。
ポッターが僕をからかって遊んでいただけだって…。本気だと奴に言われて嬉しかったのはホント。でも彼は今日だけじゃなく気付くと女の子とキスしていた。
軽いキスではなく、深いキス。
そのたびに感じる胸の痛みに蓋をして感じなくしたのは僕。
自業自得なのだろう…。
そんな気持ちが沸いてくる。
ブラックは優しく抱き締めて、耳元で囁いた。
「俺、お前のことすきなんだ。だから…」
顎に手をかけられ唇が重なった。
軽いキスは直ぐに離れる。
熱を持った唇にそっと触れてみる。
「俺にしなよ?」
再び抱きしめられ僕は彼の背に手を回して泣いた。
end
→あとがき