pale green
□黄金の月を
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※多埼
僕は一人部屋にいた。
部屋は月明かりに照らされて輝いているように見える。
珈琲の芳ばしい香りがこの部屋を満たしている。
僕は胸一杯にその空気を吸い込むと月をみやげた。
窓から時々風がはいって来て髪を撫でる。
僕は考えていた。
この世界には永久はない。必ず、何かしら変わっていってしまう。
でも、それを望むのはいけないことなのだろうか?
月はさっきから同じような光りをはっしている。
コト。
何か置かれた音がして、音のほうに目を向ける。
そこには温かそうな珈琲が置いてあった。
多摩さんは先に自分のぶんを飲んでいた。
「そんな所にいると風邪引くよ?」
わかっているけど動きたくなくてまた月を見る。
すると、多摩さんはわざわざ此方までもって来てくれた。
優しさに感謝しつつ、コップを取ろうとして手が触れる。
自分の冷たに驚いてしまう。
珈琲を飲みつつ、また月を見る。
多摩さんはそんな僕を見ている。
僕の心情を気にしてか多摩さんは話しかけて来ることもないし、離れていくようすもない。
そんな多摩さんの優しさに時々物凄く泣きそうになる。
何時の間にか繋がれたては、離れる事がないと月に祈るのは馬鹿げていることなのだろうか?
黄金の月を
見て今だけ永久を祈る。