鬼と華

□鬼百合の唄 第一幕
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御所のある京は、碁盤の目のように南北、東西が交わる道沿いに、古くからの美しい街並みが続いている。 天人襲来より遥か以前から、帝の住まう都市として発展し、何千もの神社仏閣を有する文化伝統の町。それゆえ、攘夷戦争時代も戦火が及ぶことなく、京は長らく穏やかな時代が続いていた。

しかし、攘夷戦争終結後、太平の時代に事件は起こった。幕府要人、佐久間周山が京で暗殺されたのである。公務で京を訪れた折り、宿屋の近くで、白昼堂々何者かに斬殺されたのだ。

幕府の軍事顧問であり、天人との外交の要であった周山が殺害された事件は、京だけでなく幕府内部までをも震撼させた。そして同時に、京における反幕派の勢力が台頭するきっかけともなった。

公家の三条家や錦小路家らを筆頭に、京の公家衆の一部は幕府の開国政策に消極的であり、幕府が朝廷に干渉するのを嫌っていた。
一方幕府は、内々に京都守護職と呼ばれる治安維持部隊を配置する計画を進めていたが、周山暗殺を機に、公家衆が政治への発言を強めるのではという危機感が充満していた。

そうして、幕府と反幕派の公家の対立が、表面で明らかになり始めており、京の街には、かつてない程の不穏な空気が漂っていた。


  〜鬼百合の唄〜


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