DELIVERY JOY 4 U!!!!

□Crazy Sexy Cool@
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私には学生時代からの親友がいる。彼女が結婚した際の人前式では証人として署名をし、友人代表のスピーチもした。彼女が娘を出産した時は産院にお見舞いに訪れ、可愛いベビー服を贈った。

いつだったか彼女に、結婚や出産で得るものと失うもの、どちらが大きいかと訊ねたことがある。独身の私にとって、既婚で子どものいる女性は家庭という安寧を得た代償に、仕事と家庭の両立という使命を負わされた上、色んなものを犠牲にしているように見えたのだ。例えば、自分の為に使える時間やお金、仕事に費やす時間の制約など、それは総じて“自由”という単語で表現するものかもしれないが。

友人は暫く考えてから、こう言った。

「得たものは沢山あるけど、私にとって一番大きいのは、いつか結婚しなくちゃ、いつか子どもを産まなくちゃっていう義務感から解放されたことかな」

それを聞いて、そういうものかと納得したのを覚えている。いつか結婚したい、いつか子どもが欲しいという願望があるからこそ、婚活や妊活という言葉が生まれたのだから。

思い返せば25歳を過ぎたあたりから、友人や同期の披露宴に招待されることが多くなり、数年後には出産報告がきた。30歳前後は一番のピークだったと思う。幸せそうな新郎新婦の姿や、可愛い赤ちゃんの写真を見ると、いつかは自分もという気持ちは芽生えた。けれど三十路のポイントを通過して五年程経過した今、結婚願望が消えた訳ではないにしろ、この世には結婚する道を選択する人間と、そうでない人間の二種類がいるのだと考えるようになった。

知人から婚活イベントに誘われることはあるものの、何処の誰とも分からない男性と出逢って恋愛をする、そんな自分をなかなか想像できなかった。実際、恋人がいなくて困ることは殆どなかった。クリスマスやバレンタインデーというイベント事は年を重ねるごとに無関心になる。親類縁者から将来を心配されることを除いては、気儘なゆとりある生活、自分の意思で自由に生き方を決められるということは、私にとってはこれ以上ない贅沢だった。

会社では責任のある役職に就き、経済的にも精神的にも自立している。休日は趣味や自分磨きに時間を費やし、年に一度は独身仲間と海外旅行に行く。順調なキャリアと充実したプライベートに、恋愛という要素が入り込む隙間はないと断言してもいい。

そもそも、恋愛に至るまでのプロセスが――要は、異性との出会いを求めて、相手を捜して、吟味して、それらを繰り返して――そういった過程が果てしなく遠い道のりのようで、とてつもなく面倒くさいのだ。


 〜 Crazy Sexy Cool 〜



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