恋暦

□第十章 鶺鴒鳴
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朝晩の気温差が大きくなり、季節は秋を迎えた。

初めて結ばれたあの夜から、薫の寝床の離れは、晋助との睦合いの場所となった。
戦の間を除いて、晋助は毎夜の如く人目を忍び、薫の寝床へ横たわった。
そしてひっそりと、ふたりで息を乱した。冷え込む夜も、暖かい寝床は冷めることはなかった。


「晋助様……」

「薫」


躯を繋げたまま、何度も口づけを交わす。

幾度となく繰り返しても、際限などない。途切れることのない、想いを伝え合う術を一度、覚えてしまったら。


心も、躯も繋げ合うのを、欲して止まない。


晋助は薫を抱え起こすと、向かい合う形で膝にのせて、頚を支えて深く口付けた。
舌が絡み合う度に、薫の喉から甘い息が零れる。


「ん、ぅ……」


背中から腰に続く曲線を、掌で何度も何度も確かめる。双丘をなぞって繁みの奥に指をやると、薫の中から、ふたりの体液がとろりと流れ落ちた。

それは晋助の指をすり抜けて、床にパタパタと落ちていく。薫は視線を下に走らせて、恥ずかしそうに唇を噛んだ。

その仕草すらも、堪らなくいとおしい。


「晋助様……そろそろ、お休みに……」

「まだ……、もう、一度だけ」


晋助は薫のそこを指で押し開いて、隆起したままの自分自身を埋め込ませた。


「あ……!!」


彼女の背中が、茎のようにしなった。


腹部を圧迫する存在が脚の間にありありと見てとれて、彼女は赤面して瞳を伏せた。

「は、恥ずかしい……!!」

晋助はふっと笑うと、彼女の腰に両手を添えて、促すように前後に揺らした。


「お前が動いてみな、薫」

「そ、そんな……」


言いはしたものの、少しの振動でも、薫の内部は過敏に反応した。
味わった快楽は躯が覚えていて、躯の中心は、そうすることを待ちかねたように疼き出す。


「…んっ、ん……!」


晋助の肩にしがみついて身体を支えながら、ゆっくりと腰を落とす。
晋助が入り込んでくる度に、電流のような快感が全身を駆け抜けた。

薫は瞳を閉じたまま、天を仰いだ。


「ああ……!!」


快楽に酔う艶かしい表情に、晋助の背筋はぞくぞくと震えた。
赤く色づいた耳をかじって、耳元で囁く。


「こんな綺麗な面、……他の奴には、見せられねェ」


晋助は薫の動きに合わせて掬うように腰を突き上げ、深い繋がりを求めた。
一瞬でも止められない甘美な刺激に、躯の芯まで酔わされていく。じわじわと快感が押し寄せて、熱い欲望に再び火をつける。


晋助は薫の身体を反転させ、抱きかかえるようにして肘と膝をつかせると、後ろから腰を激しく打ち付けた。


「ぁ、ああっ!!」


薫が苦し気に喘いで、床に額を擦り付ける。容赦なく与えられる強い刺激に、意識が飛ばされそうだった。


「ん…っ…あ、あ、…!」


全身の神経が躯の奥に集中していく。
彼女は擦りきれそうな悲鳴を上げて、ガクンと崩れ落ちた。


「あ、あーー……!」


中の収縮を感じながら、晋助は薫の髪を掻き分けて、背中に歯を立てた。
昂りに、抑えがきかない。


「っ、薫……!」


細い腰を、強く抱き締める。

奥の方で感じるのは、ひとつに融け合う熱だ。






肌を合わせる度に、ふたりの想いは重なっていく。
温もりを、悦びを分かち合う、その一瞬一瞬に。

愛し、愛されることに、満たされていくのを。
互いが、かけがえのないものだということを。




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