約束 〜 いつか、君に逢いに行く 〜
□第四章 水長共闘
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「銀時」
そう先生に呼ばれる度、自分の名前が特別なものに思えた。私塾に通うガキ共のどれだけが、同じように思っていただろう。
先生の一語一語は慈愛に満ちていて、声の響き、音に聴こえる前の息遣いまで、俺の耳に残っている。それは他の誰に呼ばれるよりも、特別だった。
先生はその声で、俺達に侍の道、剣の道を説いた。
初めて先生に刀を渡された日のことは、鮮明に覚えている。
「敵を斬るためではない。弱き己を斬るために」
先生は、俺にそう言った。
「己を護るのではない。己の魂を護るために」
ガキだった俺には、先生の言葉の意味はよくわからなかった。
そして戦に出るようになってからは、刀は人を斬るための道具になると知った。何度も何度も敵を斬って、血の脂と敵の怨念を吸い込んだ剣は、鈍く光るようになる。
目の前の敵を斬る、それ以外のために、俺はまだ、刀を振るったことがない。
先生が説いた剣の道。
俺は、しっかりと歩めているのだろうか。
〜第四章 水長共闘〜
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