約束 〜 いつか、君に逢いに行く 〜
□第六章 乙女の命
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もともと、ヅラや高杉を仲間だと強く意識したことはない。小さい頃から側にいたし、何をするにも一緒だったからだ。奴らが戦に出ると決めたときは、当然のように俺も剣を取った。仲間のためや国のためなんて、これっぽっちも考えやしなかった。
戦いが進むうち、共に戦う侍はしだいに増えていった。誰に惹かれてかは知らないが、俺達の周りには多くの若者が集って、俺は白夜叉と呼ばれるようになった。
仲間というのを意識するようになったのは、昨日まで一緒にいた奴らが、戦で次々に死んでいくのを目の当たりにしてからだ。奪われた命は二度と取り返せないことを、救えなかったことを悔やむ。悔やんでも悔やんでも、それは戦に出る毎に繰り返されて、自分の無力さを知る。
同時に、仲間の存在の重み、確かさを知ったのだ。
仲間を、大切にすること。
大切なものを護ること。
先生に教えられた、そんなガキの道徳みたいな話を、俺は千晶を見るたびに思い出す。
仲間の為に、ただ必死になること。
大切なもののために、自分を懸けること。
戦のご時世にそんな生き方をする、まっすぐで、不器用な女だ。
だけど、だからこそ、世の中捨てたもんじゃねえと思う。
千晶の笑った顔は、そう思わせる。
〜第六章 乙女の命〜
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