約束 〜 いつか、君に逢いに行く 〜
□第九章 夏の嵐
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誰かのことを、もっと知りたいと、触れてみたいと思うのを、恋と呼ぶのだろうか。
だとすれば、それは唐突に、自分の意志とは関わりなく沸き起こる、突風みたいなものだ。
他の誰にも感じたことのない、行き場のない欲求が募り、息苦しささえ覚える。愛しくなったり憎たらしくなったり、気持ちが振り回される。
この葛藤を、胸を開いて鎮まらせればいいのにと思う。何故なら、たったひとりの人だけに、そんな風に感じてしまうのだ。
ふたりで野営をした夜、私は、銀時に抱かれた。
男女の交わりなんて曖昧にしか知らなかったのに、私の体は銀時の指や唇に素直に反応して、彼を体内に導いた。
胸の中にあった混沌とした感情は、交わった瞬間に、飛沫のように消えてしまった。痛みを感じる一方で、体の中心が満たされていくような、不思議な感覚だった。
彼に触れられた軌跡は、眼を閉じれば辿れるほどに、鮮明に覚えている。
初めて恋を知って、初めて人の肌に触れた、十八の夏。
〜第九章 夏の嵐〜
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