約束 〜 いつか、君に逢いに行く 〜
□第十章 かぐや姫
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少し前までの俺は、時間さえあれば先生のことばかり考えて過ごしていた。死人(しびと)をいくら想い偲んでも何にもならないと、頭じゃわかっていたけれど、先生への追慕の念はそれだけ強かったのだ。
けれど、そんな日々もいつの間にか、終わっていた。
ただひとり、お転婆なじゃじゃ馬娘が現れたお陰で、気付けば過去を振り返るより、目の前のそいつを追いかけていた。
女のくせに、その辺の男共より度胸があって、本当は弱くて脆いのに、必死に突っ張って生きている。大切な人を大獄で亡くし、心に深い傷を負っていても、その片鱗すら見せない。
だからこそ、笑った顔は、とびきりの美人に見える。
そんな一挙一動に、俺の心はいちいち動かされて、どきりとしたり、舞い上がったりする。
先生にこのことを言ったら、きっとこう言われる。銀時も、またひとつ大人になりましたね、なんて。からかって、そして、優しく微笑んでくれるだろう。
俺はひとりの女に会って、恋を知ったのだ。
〜第十章 かぐや姫〜
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