約束 〜 いつか、君に逢いに行く 〜

□第十一章 決別
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死んだ父と兄のことは、今でも毎日考える。
天人襲来の折から、ふたりは国の行く末を案じ、攘夷への強い理想を抱いていた。そして、強い攘夷思想の持ち主の、水戸藩主徳川斉々様に仕え、攘夷派の一橋派政権を擁立するため奔走した。
けれど、努力は結ばれず、ふたりは寛政の大獄で処刑され還らぬ人となった。

もし、大獄がなかったら。
父と兄を思うたびに、そう考えずにいられない。もしかしたら攘夷は成功し、政権の奪取が叶ったかもしれない。

父と兄が存命していれば、私は戦に出ることもなく、武家の女性としてのたしなみを身につけ、ふたりを支えながら暮らしていただろう。父と兄は、私には、普通の娘としての幸せを望んでいたのだから。

ふたりが攘夷戦争で戦う私を見たら、一体何と思うのだろうか。その疑問が頭を過る度に、私はかつて約束された未来を思い描くのだ。

家族がいて、平穏に暮らす私。
もう戻らない家族との生活は、夢にも願う。


  第十一章 決別


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