約束 〜 いつか、君に逢いに行く 〜

□第八章 月明り
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シロツメクサの花言葉は、「約束」というそうだ。

昔、先生の私塾にいた頃、ガキ共と野原で遊んでいた時に、先生に教えてもらった。花言葉は、地方によって色々あるらしいけれど、俺が覚えている花言葉はそれだった。
先生が死んでから、先生のことを思い出す度に息苦しかった筈なのに、近頃はそんな他愛のない、幼い頃の出来事を思い返せるようになった。

街に出て、好きな場所で気楽に過ごすこと。
腹の底から笑うこと。

俺が忘れていた色んなことを、千晶が思い出させてくれた。


河原で転げ回ってふざける千晶は、じゃれついてくる犬っころみたいで、可愛かった。そんな無邪気な表情は、出来れば他の野郎には見せたくはないと思ったし、いくら安島に釘を刺されようと、自分だけのものにしておきたかった。

同時に、千晶に頭からかじりつきたくなるような、奇妙な衝動が腹の底から突き上げてきた。平静を保つのに精一杯なほど、あいつに対して、独占欲や支配欲みたいなのが沸いた。

誰かに対して、そんな風に思ったことはない。


こういう気持ちは、なんて呼べばいいんだろうか。


 〜第九章 月明かり〜



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