約束 〜 いつか、君に逢いに行く 〜

□第十二章 告白
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寛政の大獄から一年が経った。
先生が死んでから、早くもそれだけの月日が流れた。

俺が最後に見た先生は、幕府の役人に捕縛される姿だ。心配はいらない、すぐに戻るなんて言っていたのに。あれっきり、探すことも出来ないくらい、ずいぶんと遠くに行ってしまった。

幕吏に連行される時、先生は俺にこう言い残した。

「仲間を護ってくださいね」

先生と俺が交わした、最後の約束だ。

仲間と言った先生は、きっとヅラや高杉、他の私塾の弟子達を思っていたのだろう。けれど、今となっては仲間は増え、辰馬のように各地から集まった攘夷志士や、水戸藩の連中もいる。いちいち俺が手を差しのべなくても、頼もしく戦う大切な仲間だ。

その中でも、特別なもの。
他の誰とも違う、俺にとってかけがえのないもの。
千晶と思い合うようになってからは、彼女だけは何としてでも、この手で護ってやりたいと思うようになった。


先生のように、千晶が突然いなくなったりしないように。
願わくば、今もこの先も、ずっと側に。

そしていつか、千晶が思い描く平穏な暮らしを、共に過ごすのだ。


  〜第十二章 告白〜


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