約束 〜 いつか、君に逢いに行く 〜

□第二十一章 変わらないもの
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江戸はかぶき町。風俗店が軒を連ね、ネオンの明るさに夜も静まらない街。
万事屋銀ちゃんは、かぶき町の男達の憩い場、スナックお登勢の二階にある。今やかぶき町では、知らない者はいないと言っていい。

銀時が万事屋、いわば何でも屋という怪しげな商売を始めたのは、攘夷戦争が終わって間もなくのこと。身ひとつから興した商売は、順調とは言えないまでも何とか軌道に乗ったようで、いくつかの変化があった。
銀時のひとり住まいだった万事屋に、従業員ふたりと、巨大犬一匹が増えたのである。若い従業員は、ひとりは剣術道場の跡取り息子の新八、ひとりは夜兎族の少女、神楽だ。

三人となった万事屋は、浮気調査から飼い猫探しまで、依頼があれば何でも請け負いあくせく働いてはいるが、神楽と巨大犬の食費が家計を圧迫しているらしい。摂生すればいいと思うのだが、銀時は暇さえあればパチンコや競馬に入り浸る。この数年で、ギャンブルの酸いも甘いもおぼえてしまった。その上、好物の甘味の取りすぎで、二十歳後半にして糖尿の疑いがある。依頼がなければ、少年誌片手に家でぐうたら生活を送り、その姿はほぼニートといってもいい。食費や公共料金の支払いに苦労していないか、いつも心配だ。

それに、大して金にもならないのに、厄介ごとに首を突っ込んでは、傷ばかり作るのだ。いい歳のくせに、自分を曲げないのは昔のままだ。銀時は自分の筋を通して、かぶき町で侍として生きている。


攘夷戦争が終わってから、ヅラや高杉は相変わらず攘夷活動をしていて、坂本は貿易商として活躍しているようだ。
私達見廻組は、一橋派の幕臣の庇護のもと、江戸の警察組織として成長を遂げていた。幕府では、現将軍と一橋派の政権争いは続いていたが、現場に近い砲撃隊にいる限り、世の安寧を乱すような派閥争いとは無縁だった。


そして、私と銀時は……昔から変わらない。



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