約束 〜 いつか、君に逢いに行く 〜

□第二十二章 誓いの時
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例えば、「愛してる」なんて歯の浮くような甘い台詞や、高い宝石みたいな贈り物を、千晶は一度もねだったことがない。
今時の若い女は、そういうもので男の愛情を確かめようとするのに。彼女ときたら、少しの興味もないらしい。
俺に金がないのは、まあ置いておくとして……、見廻組の砲撃隊副長として毎日を過ごす彼女は、考える暇すらないかもしれない。

鉄砲玉みたいに、いつも忙しなく走り回る彼女は、男の俺よりたくましくて、いつも一生懸命だ。一方俺は、大して人に誇れる仕事をしている訳でもなし、気が回る訳でもなし、彼女の為に、何も特別なことをしてやれなかった気がする。

ただ、彼女が笑うときや、泣くとき、その気持ちを少しでも分かち合いたいと思う。彼女が笑う、その笑顔が一瞬でも続くように、側で見守っていたいと思う。

まるで空気のように、当たり前に。
ずっと一緒にいたいと思う。


仲間を……大切なものを護る。先生との約束を、俺は色んなものを背負いながら護ってきたつもりでいる。
そして千晶の笑顔も、彼女への想いも、変わらずに護り続けてきた。

彼女と初めて逢ってから、もうすぐ十年が経つ。
変わらないこの思いを、たまには、言葉にして伝えるのもいいかもしれない。


  〜第二十二章 誓いの時〜


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