約束 〜 いつか、君に逢いに行く 〜

□第二十章 繋いだ指先
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かぶき町の賑やかな人込みにまぎれて、俺はぼんやりと空を見上げる。
建ち並ぶ建物に切り取られた空を見ていると、何だか、一人きりで取り残された気分になる。萩にいた頃の澄んだ田舎の空や、戦場での埃っぽい空に比べたら、なんと無機質で冷たい空だろう。

この街にひとり住むという言い知れない孤独を、俺はずっと感じていた。千晶と再会してどれだけ激しく愛し合っても、孤独感はすぐに俺にまとわりついてきて、なかなかに消えなかった。

今まで、当たり前に側にいた仲間がいない。それは、思った以上に静かで虚しいものだった。


忙しなく街を行き交う人波にふと立ち止まり、周りを見渡してみる。
知った道順、見馴れた景色。此処に来た当初よりも、ほんの少しだけ前進しているのかもしれない。でも、それを確かめる方法なんて、どこにもない。

道沿いの磨りガラスに映った自分は、ひどく寂しげで頼りなくて、まるで、本当の俺でないような気がした。


  〜第二十章 繋いだ指先〜


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