七色の家族

□第三章 空からの贈り物
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週末婚と言う言葉がある。だが、千晶が長期出張で長崎に行ってしまってから、俺達の場合は週末婚どころか月イチ婚というのが正しい。彼女が出張先から江戸に戻るのが、月一、二回だからだ。
入籍してすぐなんて、新婚のテンションMAXで日がなラブラブするものだと思っていたけれど、新婚早々別居を強いられた俺達には、全くもって無縁の話だった。

だから久しぶりに千晶が帰って来た日は、逢えなかった間のひと月分、たっぷりと彼女を愛した。爆睡している神楽は問題外にして、一階のスナックに音が聞こえないように、長く長くキスをしながら静かに抱き合うセックスを覚えた。
そして万事屋には、千晶の着物が入る桐箪笥が増えて、彼女が帰ってきた翌日には抜群に色っぽい下着の洗濯物が増えて(ただし新八には見せない)、洗面所には赤い歯ブラシがひとつ増えた。

千晶が家族になった。
その実感はほんの小さなことの積み重ねで、俺の生活の中にじわり、じわりと溶け込んでいく。

月に一、二度訪れるその瞬間は、なかなか悪くない。だって一度に大きな幸せを味わうより、ちびりちびりと小分けにした方が、得した気分になるだろう?


  〜第三章 空からの贈り物〜



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