七色の家族

□第六章 憧れの花嫁さん
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妊娠する前は、町で赤ちゃんや子どもを見ても何とも思わなかった。可愛いなとか、喧しいなとか思うくらいで、それ以上の何の気持ちも湧かなかった。

でも、子どもが出来た時から、私の世界はまるで変わってしまった。
例えば、小さな赤ちゃんが乳母車に揺られて、気持ち良さそうに寝てるのをみた時。生まれて半年くらいだろうか。お餅みたいなプニプニの頬っぺたを、思わず触ってみたくなってしまう。
一歳くらいの子が、お母さんの隣を歩いてるのを見た時。両手を挙げてバランスをとりながらも、今にも転びそうなヨチヨチ歩きに思わず笑顔が溢れる。
公園で走り回っている、三歳くらいの子ども達。元気に声をあげて笑っていて、まるで太陽みたいだ。お腹の子も、いつかああして笑う時が来るんだろうか。そんな風に考えて、胸がじんと熱くなる。


それだけじゃない。高く抜けるような青い空、風にそよぐ緑の木々。鮮やかに咲く花の色彩、甘い匂い。
私が目で見る景色、肌で感じるすべてのことを、お腹の子どもと共有している。どんな些細なことでも、当たり前のことでも、子どもに余すところなく伝えたくなる。これから産まれてくる世界は、こんなにもきれいで光に溢れて、眩しいのだと。

子どもがいる。その奇跡のお陰で、私の世界は今までの何倍にも輝いて見える。


  〜第六章 憧れの花嫁さん〜


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