七色の家族

□第八章 陽だまりの幼子
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銀時と私の結婚式から、一週間が経った週末のこと。大きな紙袋を抱えたお妙さんが、万事屋を訪ねてきた。

お妙さんが持ってきたのは大量の写真で、それは結婚式での私達の晴れ姿や、参列(見物)してくれたかぶき町の住人達を写したものだった。

「お店の子達みんなで、手分けして写真を撮ったの。素人だから、プロの方が撮るみたいにきれいじゃないから、申し訳ないんだけど……」

どうやら、スナックすまいるの従業員の皆さん総出で、カメラマン役を引き受けてくれたらしい。
お妙さんは写真を山のように積み上げて、私に向かって微笑んだ。

「よく撮れてる写真を選んで、フォトブックを作ろうと思っているの。千晶さん、どれでも気に入った写真、選んでくださいね」
「えー!?」

私は恐縮して両手を振った。

「そこまでしてもらうなんて、悪いわ。写真があるだけで十分よ」
「いいじゃありませんか。とても素敵な結婚式だったんですもの。何か、形に残るものがあったっていいでしょう」
「でも……」

困って銀時を見ると、彼は甘えとけば、と言いたげに肩を竦めて見せる。

「てめェの写真選ぶなんざ、俺の趣味じゃねェや。お前らに任せるよ」

彼がそう言ったので、新八や神楽が嬉々とした表情で写真を選び始めた。

「天気がよかったから、どれも青空が写っていてきれいですね!」

と新八が言った。本当にその通りで、私の白無垢がとても眩しく見えた。我ながら、お登勢さんに借りた白無垢の花嫁衣装は様になっていたと思う。


やがて、神楽が一枚の写真を手にとって興奮気味に言う。

「あ、この写真きれいアル!!」
「えっ!?どれどれ!?」

期待して覗きこむと、傘を片手にポーズを決めて、満面の笑みを浮かべる神楽の姿。

「…………ハイハイ。私じゃなくて、アンタがよく写ってるって意味ね」


写真はかぶき町の花嫁行列だけじゃなく、飲み屋での二次会の様子も撮されていた。悪のりしたオカマ軍団に男体盛りにされたホストの狂四郎さんとか、酔っぱらって一触即発の真選組と見廻組の面々とか。知り合いの意外な写真というのはとても面白く、私は笑いを堪えながら写真を見る。


ふと、一枚の写真が目に飛び込んできた。それは空から降り注ぐ、色とりどりの紙吹雪を見上げている銀時の写真だった。
ぼうっとしているだけのような、だが微笑んでいるようにも見える、とてもいい写真だ。銀色の髪が風に靡いて、緋色の瞳が真っ直ぐに宙を見つめている。胸がトクンと鳴った。思えば銀時の写真なんて、数えるほどしか持っていない。


私の様子に気付いてか、神楽がニヤニヤしながら言った。

「銀ちゃんの写真、よっぽど気に入ったみたいアルな。手帳にでも入れて、肌身離さず持ち歩けばいいアル」
「そ、そんなんじゃないわよ!」

私は否定したけれど、結局銀時の写真は私の手帳に収まることになり、神楽の言ったとおりとなった。


  〜第八章 陽だまりの幼子〜


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