七色の家族

□坂田家の休日B
1ページ/3ページ


久しぶりに千晶が出張先から江戸に戻った夜。かぶき町で彼女と食事をして、飯が美味くて酒も旨くて楽しくて、俺はつい飲み過ぎてしまった。
家に帰ったら彼女と沢山ひっついて、いやらしいことを山程してやろうと思っていたのに、酔いと眠気に敢えなく撃沈。彼女が風呂に入っている間、俺は和室で先に寝てしまった。

だが、酔って眠るとどうにも眠りが浅い。俺は早朝の変な時間に目が覚めた。
隣の布団では千晶が眠っていた。普段は独りで寝起きしているから、彼女がいると和室がやたら狭く感じた。彼女は布団をはだけて、無防備な顔で気持ち良さそうに寝息をたてていた。何だか微笑ましくて、隣に彼女がいる嬉しさと合間って俺はふっと笑みを溢した。

だが、ふと視線を下の方に向けると、すらりとした脚が丸出しになっていた。

「…………」

俺はつい、見いってしまった。いつものことだが、千晶は寝相のいい方じゃない。掛け布団を蹴っぽって、あらわになった真っ白い太股。柔らかそうで滑らかそうで、誘っているようにしか思えない。朝っぱらから、俺の股間のセンサーは元気に反応した。

(いいよな。ちょっとくらい)

俺は自分の布団から這いつくばるように抜け出して、眠っている千晶に覆い被さり、おでこにかかった前髪をそっとかきあげた。
彼女が薄目を開けて、顰めっ面で見上げてくる。

「……なに、銀時……」
「なァ、昨日の夜出来なかったろ?……新八達が来る前に、な?」
「ん、まだ眠……」
「千晶……」

額や頬にキスをしながら乞う。だが、彼女はやたらハッキリした声で、

「いや、もう。スケベ。エロおやじ」
「ぶべっ!」

夫に対してあるまじき暴言を吐くと、寝惚けているとは思えないほどの力で俺を張り倒してきた。そして、俺と反対側の方を向いて再び穏やかな寝息をたて始めた。

(コイツめ……思いっきり引っ叩きやがったな!)

昨晩はかぶき町の道端で、あからさまに欲情した目をして誘ってきたくせに。一晩経ったら見事に手のひら返しだ。

俺はムカついて、だんだん意地になってきた。横向きに寝ている千晶に、馬乗りになるように覆い被さる。彼女は寝るときにはブラジャーをつけない。寝間着の浴衣の衿を掴んで強引に胸元を開くと、双丘がこぼれ落ちるように現れた。真っ白でマシュマロみたいで、薄い褐色をした尖端が誘うように佇んでいる。
俺はゴクリと唾を飲んだ。

(やっぱ、誘ってるだろ……)

白い肌に唇を寄せると、俺が使っているのと同じ石鹸の匂いがした。彼女の乳房は柔らかくてしっとりとしていて、俺の手のひらに包まれて自由自在に形を変える。
尖端を指で弾いてから、口の中に含んで飴玉のように転がした。弾力が増して、だんだんと固くしこっていくのが分かる。すると千晶の唇から、鼻にかかった甘ったるい声が漏れ始めた。

「あ、ん……やぁ」

無意識のうちだろうか、彼女は膝小僧を頻りに擦り合わせていた。太股の内側をそっと撫でると、彼女は待ちきれないように自ら脚を大きく開いて腰を浮かせた。
こんな大胆な彼女は、今まで見たことがない。半ば夢現で抱かれているからかもしれない。

「ぬ、脱がせますよー……」

俺は柄にもなくどきまぎしながら、彼女の下着に手をかけた。クロッチの部分が濡れてうっすらと染みができている。そっと、彼女の茂みの下の部分に触れると、そこは透明な液体でしっとりと湿って暖かく、誘うように俺の指に絡み付いてきた。
中指を挿入してかき混ぜる。もう準備なんていらないくらい、俺を迎え入れるのを待っているみたいだ。

俺は片手で甚平とパンツをずりさげながら、戸棚の引出しにちらり目を走らせた。今は、避妊具を取りに行くたった数秒の時間すら惜しい。早く彼女の中に埋もれたくて、俺自身は臍につきそうなくらい反り返ってる。このまま挿れたら、ダメだろうか。
そんな葛藤の隙に、千晶が先に行動を起こした。

「……オイ!?」

彼女が俺自身に手を添えて、自らの蜜壺にあてがってきた。一体どこで覚えてきたのか、腰の高さを巧みに調整して、俺の腰に脚を絡ませて直接迎え入れようとしていた。

「あ、ちょっと、お前……!」
「あっ、ぅん……あぁ」
「う……!」

ズル、と誘い込まれるようにして、一気に根元までが包み込まれた。彼女の中はヌルヌルしていて、とても狭くて、襞の一枚一枚が絡みついてくるみたいだった。
俺はギュッと目を瞑ると、肘をついて体を揺らし始めた。

「ああ、やべェ、気持ちい……」
「はァ……あぁ、ん、私も」

彼女はやけに色っぽい、掠れた声で喘いでいた。普段は控えめな声しか出さないのに、半分寝惚けているせいか、声に遠慮がなかった。
静まり返った早朝、外へ声が漏れ聞こえやしないかとハラハラしたが、扇情的に喘ぐ彼女は見たことのないくらい婀娜っぽくて、途中からはそんなことはどうでもよくなってしまった。

体が火照って暑くて堪らず、甚平の袖を抜いて全裸になる。そのままぎゅうと彼女を抱きすくめると、直に触れ合う体温に俺の息子がますます反応した。

俺は千晶の脚を肩に担いで、ぐ、と繋がりを深めた。彼女が一番好きなやつだ。蜜液を指ですくって、小さな突起をくるくると指の腹で捏ねる。忽ち彼女の腰がビクンと跳ねた。

「気持ちいいか?」
「んっ!……気持ち、い……!」
「千晶……いきそう?」
「ん、あァ!……う、ん……!」

羞恥も遠慮も取っ払った彼女は、俺の腕にしがみついて、からだ全体で快楽を享受していた。襞の上側を擦り上げるようにして腰を打ち付けると、首を仰け反らせて甲高い悲鳴を上げる。

「いっちまえよ……コレ、好きだろ」
「だめ、……あぁ、いく……!」

甘ったるい声で訴えて、彼女は腰を震わせて絶頂にのぼりつめた。中がきゅうっと締まって、不規則に痙攣しているのが伝わってくる。搾り取ろうと蠢いてるような気がして、俺は歯を食い縛って堪えた。

……が、限界はすぐそこに見えている。吐息を漏らす千晶の口から、白い前歯の先と赤い舌が覗いているのが物凄くいやらしい。胸を大きく上下させて荒い息をしながら、彼女は薄目を開けて俺を誘っていた。
肩の横辺りに肘を付くと、俺は小刻みに腰を揺すった。射精感が一気に高まる。このまま、彼女の中に注ぎたい。彼女の熱い中の動きに誘われるまま、一番深い場所で解き放ちたい。

「う、っあ、……やべ、出そう」

短く呟いたその時、意識が飛んだように眠りへ落ちていく千晶が目に飛び込んできた。
いくら夫婦と言え、感情に流されて勝手なことは出来ない。俺は寸でのところで自分自身を引き抜くと、手のひらでしごいて、彼女の臍のあたりに白濁をぶちまけた。

「はぁ、はぁ、は……」

何度か腰を震わせて全部を吐き出してから、俺はドッと力が抜けて彼女の隣に倒れ込んだ。汗が吹き出して、肌がべとべとして気持ち悪い。ふと、昨日の夜風呂に入りそびれたのを思い出す。

千晶の肌を汚したものをティッシュで拭って、はだけた寝間着を元通りに戻した。いつもは後始末をされるのを極端に嫌がるのに、相当眠いらしく、彼女はずっとされるがままだった。俺が何をしてもすやすやと眠り続けて、風呂場で汗を流して戻ってきても、同じ体制で眠りこけていた。

自分の布団ではなく、千晶の布団にすっと滑り込み、背後からそっと抱き締める。じんわりと肌の温もりが伝わってきて、甘酸っぱい汗の匂いがした。風呂に入って頭が冴えると、ついさっきまで彼女を抱いていたのが夢の出来事みたいだった。
俺は、思ったことをそのまま口にした。

「次、お前の中に出してもいい?」
「…………」

返事はなかった。寝ているから当たり前だ。俺はふっと笑みを漏らして、彼女の髪を優しく撫でた。

「やったあとはいつも寝るもんなあ、お前」

こんな風に、いつも触れられる場所に千晶がいてくれたらいいのに。俺はそう願いながら、目を閉じて彼女の肩を抱いた。
一緒にいたくて結婚した。でも、いつも一緒にいられる訳じゃない。彼女は出張中で一時的に江戸に帰ってきてるだけで、休みが終わったらまた出張先に戻ってしまう。

不満がないと言えば嘘になる。惚れて結婚した女だ。いつも手元に置きたいに決まってる。
ただ、彼女がそれを望まないことくらいは分かる。自分の力を試そうとか、組織の役に立ちたいとか、俺とのこととか、色んなことを考えて葛藤しながら真摯に仕事と向き合っている。俺は、そんな彼女の一生懸命なひたむきさに惚れたのだ。

「千晶……」

俺は彼女の背中に唇を寄せると、小さな声で懇願した。

「早く出張なんて区切りつけて、ここで暮らせよ」

面と向かってなんて、恥ずかしくてなかなか言えない。けれど、いつも思っていることを、分かっていてほしい大切なことを、俺は彼女に告げた。

「好きだよ、千晶」



.
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ