「それ、俺とペアだから」 高野さんに優しい眼差しを向けられると、胸がドキドキしすぎて……どうにかなってしまいそうだ。嬉しい。 「律?泣いてんの?」 「泣いてません……」 顔を見られたくなくて高野さんの胸に顔を埋めたら、自分と同じように鼓動が速くて少し安心した。 高野さんも同じなんだ。そのままギュッと抱き締めてくれた腕が凄く温かくて、心地よかった。 「泣きたいくらい嬉しいのは、俺の方なんだけど。律、顔見せて?」 高野さんは俺の顔を上に向けさせ、ちゅっと短いキスをしたあと、もう一度唇を合わせてきた。差し出される舌は熱く、全身が痺れたような感覚に陥る。崩れ落ちそうな身体は、高野さんの腕がしっかり支えてくれた。 「律、俺もう限界なんだけど」 限界? 「あっ、すいません」 ずっと高野さんに体重を預けっぱなしなことに気付き、慌てて体を離すと、再び引き寄せられてしまった。 「アホか。そうじゃなくて、お前を早く抱きたいって言ってんだけど」 抱きたいって、いきなり言われても。あまりにも急な展開に、羞恥で高野さんを直視出来ない。 高野さんはと言うと、そんな俺にはお構いなしで、体をふわりと抱き上げベッドに直行していた。 「ちょっ……待って下さい」 「そんな顔で俺を煽るな、止まらなくなる」 俺の身体をベッドに沈めると、高野さんは首筋に舌を這わせてきた。時折強く吸われ、思わず声が漏れる。 「あっ……んっ……」 恥ずかしくて堪らないけれど、高野さんに求められることが嬉しくて、胸がいっぱいになってしまう。 俺に、何が返せるだろう? 「あの……一つ、聞いてもいいですか?」 「何?」 「えっと……高野さんが一番欲しかった物って何だったんですか?もう手に入ったって、言ってましたけど」 やっぱり『一番欲しい物』は自分があげたかった。もう過ぎてしまったことを悔やんでもしょうがないけれど。でも知りたい! 「はぁ……お前さぁ、そういうのホント鈍いよな」 高野さんはため息混じりに答えた。 「え?」 「そんなとこも全部好きだけどさ」 「勿体ぶらないで早く教えて下さい!」 「律、お前だよ」 また唇が重ねられる。 こういう時、どんな顔をすればいいのだろう。嬉しくてたまらないのに、どうしようもなく恥ずかしい。 「だからもう、俺の前から消えたりするな」 この時、改めて思ったんだ。高野さんは多分、人一倍傷付きやすくて壊れやすい人だから、ずっと傍にいてあげたいって。 と言うより、何よりも自分が傍にいたいのだ。そして、愛しい人の背中に腕を回し、ぎゅっと抱き締めた。 「────はい」 END. 20111224 |