休日の朝、隣で眠る恋人を起こさないように静かにベッドから抜け出た。年上だけど、童顔で可愛い容姿をした恋人。普段の疲れが溜まっているのだろうか、まだ起きる様子はない。 音を立てないようにキッチンへ向かい、冷蔵庫から冷えたミネラルウォーターのペットボトルを取り出した。それをコップに注いで一気に飲み干す。 今日の朝食はトースト、スクランブルエッグに、サラダと フルーツヨーグルト。 そろそろ木佐さんを起こさないといけない。ベッドに戻るとタオルケットにくるまり小さく丸まった姿が見えた。寝顔はと言うと、これがとてつもなく可愛くて。やばいよなぁ、これが三十路だなんて誰が信じるだろう。つーか、その寝顔は反則でしょ。 いつまでも眺めていたいけれど、今日は木佐さんが観たいと言っていた映画を観に行くことになっているのだ。 「木佐さん、起きて下さい」 こんなんで起きるわけがないか。いつものことだけど、はっきり言って俺の恋人は寝起きがよろしくない。あと5分だけ……これが何度となく続いたりする。 「木佐さーん、朝ですよー。ほら起きて」 「んー……ゆ……きな、あと5分」 ほらきた、でも今日は久々の休日デートだからいつまでも寝かせておくわけにはいかない。 「映画観に行くんでしょ?早く起きて下さい」 「もう少し寝かせろって……」 この"もう少し"が、非常に質が悪い。朝食どころか既にお昼を過ぎてしまっているわけで。 疲れていると言われれば無理に叩き起こすことも出来ず、つい甘い顔をしてしまう。でも映画は今日が最終日、あとで怒られるのはこの俺だ。 「木佐さーん?もしもーし、いい加減起きないと襲っちゃいますよ」 小さく寝息をたてながら、無防備な顔で眠り続ける愛しい恋人。ただ顔を見ているだけでは飽きたらず、そっと頬を指で触れる。このまま起きないのならばと、薄く開いた唇に少しずつ自分の唇を近付けて。あと少し、あと数センチで────。 「何してんだよ、誰が襲うって?」 唇に伝わるのはいつもの柔らかな感触ではなく、かわりにむぎゅっと押し付けられた木佐さんの手の平。 「起きてたんですか、もう少しだったのに」 「何がもう少しだっ!油断も隙もねぇーな」 「起きない木佐さんが悪いんですよ。それに、お姫様は王子のキスで目覚めるもんなんです」 「誰が姫だ!バカなこと言ってんな」と真っ赤になりながら顔を背ける感じは可愛いけれど、何を今更とか思わないでもない。いつもエロいこといっぱいしてくるくせに、そのギャップは半端なくて。ヤバすぎる、そんなところが堪らない。 俺はタオルケットを引き剥がし、華奢な身体を組敷きながらもう一度唇を寄せた。今度こそ、その柔らかな唇に。 「んっ……ふ……」 舌を差し込めばそれに応えてくれて、キスは深くなるばかり。俺の身体を突っぱねていた腕も次第に力が抜け、首に絡みついてきた。 「バ……カ、もう起きてるだろーが」 「別にいいじゃないですか。木佐さんといっぱいキスしたい」 * 「映画はもういいから」 「え、いいんですか?だって最終日……」 結局のところ映画は特別に観たかったものではないらしく、たまには外で恋人っぽいデートをと思ってくれていた みたいだ。 「お前そんな状態じゃ無理だろ?」 そう言って、既に大きくなった俺の中心を擦り上げながら木佐さんはニヤリと笑った。 「こんなに密着してるんだから当然です」 どうやら久しぶりのお外デートは仕切り直しになりそうだ。そんな風に誘われたら、断れる筈もなく。と言うよりもっともっと触れていたい、余裕なんてものは全くない。 離れかけた身体を再び密着させ、首筋にキスを落とす。くすぐったいと呟きながらも満足気に微笑む木佐さんは小悪魔のようだ。 でも惑わすのは俺だけにして下さいね。 END. *20120920〜20121121までお礼分として使用。 |