世界一初恋

□年下彼氏の主張
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「ん―っ……」

久々にゆっくり過ごせる休日。眠い目を擦りながら目覚まし時計に手を伸ばし確認すると、もうすぐ11時になる所だった。
カーテンの隙間から差し込んでくる光が眩しすぎる。それ以上に眩しいのは、隣で寝ているこの男。雪名皇、年下の恋人。寝顔まで無駄にキラキラしてやがる。それに雪名、お前は手加減ってもんを知らんのか!
昨夜の激しい行為のお陰で、腰に鈍い痛みが走った。

「痛てぇ……」

あぁ……思い出した。ベッドに誘い入れたのは俺の方だ。でもやっぱお前のせーだろ!そうだ、俺は何も悪くない。
正直体もダルいしこのままもう少し寝てようかとも思ったけれど、雪名は午後からバイトだと言うし、昼飯ぐらいは作ってやるとするか。
まだ寝ている雪名を起こさないように、そっとベッドから這い出ようとした。

「木…佐さん?どこ行くんですか?」
「どこって…もう11時だぜ、お前バイト行くんだろ?起きた方がいんじゃねーの?」
「ん〜あと10分だけ…こうしてたい。」

そう言って長い腕を腰に回され、引き寄せられた。再び密着する体。
後からギュッと抱き締められて、体温が心地よかった。雪名の匂いがする……。俺は再び瞼をおろす。

「やべっ!」

勢いよく飛び起きたものの、隣で俺を抱き締めていた筈の雪名はもう居なかった。
慌てて時計を見ると午後の2時を示している。
あの後3時間も寝ちまうとか、マジありえねぇ!俺最悪じゃん…。雪名に飯作ってやりたかったのに。
取り敢えず顔でも洗ってくるか。どうやら雪名は、ちゃんと食事をしてからバイトに行ったようだ。自分の分の食事もしっかり用意されていた。
遅い昼食をとりながらぼんやりしていると、メールの着信音が鳴っているのに気付く。
携帯を開くと、そのメールは雪名からのものだった。

『一人でもちゃんと食べて下さいね!今日もいっぱい本売りま〜す。』

あぁ、今食ってるよ。メールなんかしてないでちゃんと働けよ?
今日も雪名の周りには女の子の取り巻きが沢山いるんだろうな…。今は俺が付き合ってるんだし、相手は客だ。あまり気にはしていない。
や、気にはなる。あの容姿だしモテるし……大学にも狙ってる子はいっぱいいそうだ。敵は多い。やっぱり嫉妬心は有るわけで。
自分も最初はその数多くの一人だった。まぁ彼女達と決定的に違うのは、話し掛けるなんてとんでもなく、遠くから見てるだけだったという。

そう言えば、あの日たまたま横澤さんに会ったから、下の名前を知ることが出来たんだった。 きっかけを作ってくれた営業の暴れ熊には感謝してる。あの人すげー苦手だけどさ。
感傷的になるとか、らしくねぇし!
気を紛らわす為にテレビを付けてみたけれど、日曜の昼間なんて何も面白い番組はやっていなかった。

「つまんねぇな…」

雪名が居ないと何をしていいのか分からない。特にやりたいことも無いし。雪名と付き合う前は、一人でいる時何してたんだっけ?誰かしら遊んでくれる奴は居たか。どちらかの部屋か、あるいはホテルか。…………はってエロい事のみかよ!自嘲しながら、自分は何てつまらない人間なのかと考える。

「い、今は違うんだからな!」

部屋には自分一人だと言うのに、思わずそんな言葉を口に出していた。
昔は誰かと居ても心が満たされることなんて全く無かったけど今は違う。俺には雪名が居る。
愛のないセックスなんて、ただ虚しいだけだ。
それに気付けたのも雪名のお陰。
ただ…。アイツはまだ若くて学生だし、俺が将来を台無しにしてしまうんじゃないかって。そんなことばかりを考えてしまう自分が居る。あまり考えたくはないが、これが現実。
エグイ話だよな。
あっそうだ。レンタル店で映画借りてたのをすっかり忘れていた。返却日っていつだ?今日までじゃん!
借りたのはいいけど、見る時間がなくてそのままになっていたことを思い出した。
これで時間を潰すことができるな。

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