世界一初恋

□イヴの夜は
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12/24、高野さん誕生日&クリスマスイヴ────。

「お前何で昨日先に帰ったんだよ」
「すみません、昨日は予定があったので……」
「恋人より大事な用って何?」
「ごめんなさい」
「言いたくないならいいけど」

高野さんはご機嫌斜めだ。上手く宥められたらいいんだけど、これと言っていい理由も見つからない。でも、こうして拗ねてる高野さんはちょっと可愛くも思えたりする。
もちろん全ては今日の為、少しでも笑顔になってもらいたい。

「ほら、あそこの最上階」

今日は部屋で過ごすのだとばかり思っていたら、レストランを予約していると言いだした。その高野さんが指差す場所は、とある高層ビルの最上階。

「うわ……夜景が凄く綺麗ですね!こんなとこ初めてです。…………でもここ、高いんじゃないですか?」
「俺だって初めてだ。お前と来たかったし、気にするな。付き合って初めてのクリスマスイブだし」
「高野さんの誕生日でもあるんですよ?」
「お前が喜んでくれたらそれでいい」

気にするよ……今日は俺が高野さんを喜ばせたいのに。

もう二度と好きにはならないって決めてたはずだった。だけど、高野さんを知れば知る程、好きだと再確認させられるばかりで。
結局は自分の気持ちに嘘をつけなくて、こうして付き合っている。二人きりで過ごす時間が、些細なことを話している時間が、こんなにも幸せだなんて……。





「雪……」

帰り道、マンション近くの坂道でふと空を見上げたら雪がちらついていて、とても幻想的に見えた。

「雪っていいですね……ちょっ、何勝手に手とか繋いでるんですかっ!誰かに見られたら……」
「手、冷たいだろ?それに誰も見てないって」
「きょ、今日だけ……ですからねっ」

こんな言い方しか出来ないのに、それでも高野さんは嬉しそうな顔をしていた。
あまりにも嬉しそうな顔をするからそれ以上言うのはやめて、気が付けば高野さんの手を握り返していたんだ。

取り敢えず、高野さんを部屋に招き入れたものの……どうしようか。
あ、プレゼント!

「高野さん、ちょっと待っていて下さいね」

プレゼントは何とか間に合ったし、クラッカーと、小さいながらもクリスマスツリーも飾り付けた。高野さんに喜んでもらえるといいんだけど。

パーン!

「高野さん、お誕生日おめでとうございます!」

クラッカーから飛び出た銀テープが、ヒラヒラと宙を舞った。
あ、れ……?少し戸惑いぎみの高野さんに不安を覚える。

「ありがとう。ごめん、ちょっとビックリしただけ。俺こうやってちゃんと誰かに祝って貰うの初めてかもしれない」

あっ……、高野さんが複雑な家庭環境で育ったことを思い出す。

「これからは俺が毎年祝ってあげますから、そんな顔しないで下さい。あとこれ、プレゼントです」
「そうか、昨日これを買いに行ってくれてたんだな?開けていい?」
「どうぞ」

なぜか、あげた方の俺がドキドキする。

「すみません。高野さんが欲しい物よくわからなくて、こんな物しか……」
「そんなことない、この時計すげー嬉しい!それに、一番欲しかった物はもう手に入ってるから」
「そうなんですか?」

俺が高野さんあげた物は時計。同じ時間を共有したい、とか思ってしまって。とにかく喜んでもらえたみたいで良かった!

「律、メリークリスマス」

そう言って高野さんは、ポケットから赤いリボンがかけられた小さな箱を取り出し、俺の目の前に差し出した。

「俺に?」

どうしよう、何かわかってしまったかもしれない。箱を開け、中から出てきたのはシンプルなリングだった。

「あの……これ」

嬉しすぎて、泣きそうになるのを必死にこらえた。俺より忙しかったはずなのに、こんなのいつ買いに行ったんだろう。高野さんがはめてくれたリングは、指にピッタリおさまった。

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