昔ある小さな村に、可愛らしい女の子が住んでいました。女の子は、お母さんからもらった真っ赤なずきんがお気に入りです。いつもかぶっていたので、赤ずきんちゃんと呼ばれていました。 ある日赤ずきんちゃんは、森の奥に住むお婆さんの所へ、出来立てのパンとジャムを届けるようにお母さんから頼まれます。 「 ほら小野寺くん、美味しいパンとジャム作っておいたからお婆さんの所へ持って行ってあげて」 「あれ、美濃さん?」 「美濃さんじゃなくて、お母さん、だよ」 お母さんはそう言ってニコリと笑うと、パンとジャムを詰めたバスケットを差し出しました。 「どうでもいいですけど、俺男だし。しかもスカートって…」 「いいんじゃない?よく似合ってるよ。はい、これ持って行ってらっしゃい。寄り道はしちゃダメだからね」 「わかりましたよ、行けばいいんでしょう?」 赤ずきんちゃんはバスケットを受け取り家を出ると、ゆっくり歩き始めました。 お婆さんの家までは、何度か1人で行ったことがあります。しばらく歩くと森の入り口が見えてきました。中に入れば、小鳥のさえずりが聞こえてきます。 今日は天気がいいので、動物たちも嬉しそうに走り回っていました。 ふと足を止めると、小さな黄色いお花が咲いているのが見えました。 「綺麗だなぁ、この花も一緒にプレゼントしてあげよう」 お婆さんは喜んでくれるでしょうか。赤ずきんちゃんは1本ずつ丁寧にお花を摘み始めます。その様子を木の影から見ていたオオカミが、赤ずきんちゃんに近づいてきました。 「お前スカートなんかはいて何やってんの?」 「あっ、高野さん。そこは突っ込まないで下さい。今日は相手してるひまないですからね、どっか行って下さいよ」 「冷てぇな、いーじゃん少しくらい。つーか、その生足エロイんだけど」 「ちょ…、そんな目で見ないで下さい!これからお婆さんの所へパンとジャムを届けなきゃならないんですよ。そこどいて下さい」 オオカミは村の人々からは恐れられていましたが、赤ずきんちゃんは平気でした。横暴でエロくて少し意地悪なところもありますが、基本赤ずきんちゃんには優しかったからです。 オオカミは赤ずきんちゃんが好きすぎて、いつもあの手この手でチャンスを狙っています。この日も例外ではありません。 「花なら、もっといっぱい咲いてるとこ知ってるけど?」 「えっ、そうなんですか?」 「俺が案内してやる」 何も知らない赤ずきんちゃんは、たまには役に立つではないかと、下心いっぱいのオオカミのあとをついて行ってしまいました。 「うわー、凄いですね!」 「だろ?」 オオカミは得意げに腕組みをし、赤ずきんちゃんに微笑みました。案内された場所は一面お花畑で、とてもいい香りがします。 お母さんには寄り道はダメだと注意されていましたが、お婆さんの喜ぶ顔を見たかったので、夢中でお花を摘み続けました。 「高野さんありがとうございます」 「どういたしまして。後で報酬は貰うし…」 「え?何か言いました?」 「や、何でもねぇよ。じゃーな」 いつもは執拗に迫ってくるのに、オオカミが大人しく姿を消したのを不思議に思いながらも、赤ずきんちゃんはご機嫌でした。この時、オオカミが舌舐めずりしていたのにも全く気付いていません。 この隙にオオカミは、今がチャンスとばかりに猛ダッシュをするのでした。目指すは森の奥にあるお婆さんの家。先回りをして赤ずきんちゃんを美味しくいただいてしまおう、という作戦です。 「これくらいでいいかな。そろそろ行かなきゃ」 赤ずきんちゃんは元の道にもどると、再びお婆さんの家を目指します。すると、向こうから1人の男の人が歩いてきました。男の人が問いかけます。 「小野寺、どこへ行くんだ?」 「羽鳥さんこんにちは、その格好って…」 「あぁ、どうやら猟師のようだな。それより、この辺は手の早いオオカミがうろついているから気を付けろ。その格好は危険すぎる」 「俺だって好きでスカートはいてるわけじゃないですよ。仕方ないでしょう?これが用意されてたんですから」 「まぁとにかく。俺には気を付けろとしか言えない」 「忠告ありがとうございます。じゃぁ俺は先を急ぐんで失礼します」 猟師と別れた赤ずきんちゃんは、お婆さんの家へと急ぎました。 「ちょっと遅くなっちゃったなー」 ちょうどその頃。お婆さんの家のドアを足蹴りする者がいました。そうです、先程赤ずきんちゃんにお花畑を教えたあのオオカミです。 「だぁれ?そんな乱暴な、静かにしてよ」 オオカミは勢いよくドアを蹴破ると、ベッドに横になっていたお婆さんの元に駆け寄りました。 「なーんだ、高野さんか」 「木佐、そこどけよ」 「やだよ、俺は律っちゃん待ってるんだから」 「律は俺がいただく」 オオカミは嫌がるお婆さんをベッドから引きずり下ろすと、着ていた服を交換しベッドに潜り込みました。 「この服ちっちぇーな…」 「ねぇ、まさか俺の出番これだけー?」 「お前まだいたの?早く出てけって」 「もぅー、相変わらず勝手なんだから…」 でもお婆さんはどうしても納得がいきません。どこか隠れられる場所はないかと部屋を見回してみると、ちょうどよい場所が見つかりました。 「ここがいい」 お婆さんは大きなクローゼットの中に隠れることにしました。さっそく中に入ろうと扉を開けたのはいいのですが、誰が想像できたでしょう。なんと中には先客がいたのです。 「あ……」 「いらっしゃい」 先客はニコリと笑うと、お婆さんを中に招き入れました。 |