世界一初恋 2

□ほろ苦いキス
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まさか本当にやるとは思わなかった。でもさすがに2週間は言い過ぎたか?いやいや、そもそも身体によくないし、寧ろいいことをしたんじゃないかと思う。

ことの発端は2日前まで遡る────。



『嫌です!』
『キスぐらいさせろ、減るもんじゃねーし』
『そういう問題じゃないです。ああそうだ、禁煙!2週間禁煙出来たらキスぐらいいくらでもしてやりますよ!』

いつものように勝手に部屋に乗り込んできた挙句、いきなりキスさせろと強引に迫ってきたので、咄嗟にそう言ってしまった。
高野さんは、忙しい時ほど本数が増える。だから、絶対に無理だと思った。
でも本当に煙草を吸っていないかどうかなんて俺には分からないのだが、さっき気付いたのだ。
高野さんの机にある大量のガムと、歯形のついたボールペン。それにやっぱりキツいのか、イライラしているようにも見える。

「何?このガムの山」

経緯を全く知らない木佐さんが、不思議そうな顔をして高野さんに尋ねていた。

「ただいま禁煙中」
「えー高野さんが?もしかして彼女に "煙草はやめて" とでも言われたわけ?」
「まぁそんなとこ。もし俺が無意識に煙草持ってたら一発殴れ、今なら許す」
「えっ、マジで?愛だねぇ」

近くにいた羽鳥さんと美濃さんに至っては、黙って頷いているし。
ヤバイ、この人本気だっ !!

「あの、高野さん?無理しない方が……」
「あ?誰が無理してるって?」
「だから、我慢は身体によくないですよ〜?ストレス溜めるぐらいなら、いっそのこと吸ってしまえばいいじゃないですかっ、ね? ああ、すみません気がきかなくて! 俺買ってきますっ !!」
「小野寺、そんなに吸わせたいのかよ。安心しろ、俺の意思は固い」
「あはは〜……そのようですね……」

でも、でも、でも!まだたったの2日だしあと12日間、先は長い !!
とは言うものの、それとは別に気になることがある。それは……高野さんがとても眠そうにしている、ということ。
まぁ単純に彼の方が仕事量が多く、睡眠時間も短いってことなんだろうけれど、完全に落ちていることもあってさすがに心配になる。



「ここなんですけど…………高野さん?ちょっと、聞いてますか?」
「あー…悪ぃ、もっかい言って」
「どこか調子悪いんですか?病院行った方がいいですよ」
「いや、そうじゃない。気にするな、原因は分かってるから」

気にするなと言われても、明らかに普通ではないわけで。
原因が分かっているのならどうして?このままでは、約束がどうこう言う前に高野さんが倒れてしまう。それなのにこの人は。

────あれから10日。
数日で挫折するだろうと高を括った俺を嘲笑うかのように、禁煙は未だに続いていて。2週間では短すぎたかもしれない、せめて1ヶ月にすべきだったか。ただ、眠そうなのは相変わらずだった。

その日の夜。やっぱり高野さんが心配で、俺は彼の部屋に行った。

「何?心配してくれてんの?それとも、諦めてご褒美先にくれるとか」
「そんなわけないでしょ! ただ様子を見に来ただけですよ、いきなり倒れられても困るんで」
「ふぅん。まぁ別にいいけど。あとたったの2日だし」

そうなのだ、あと2日。どうしよう……あんなこと言わなきゃ良かった。
吸わなくても平気ならこのままやめてしまえばいいのに……なんて、高野さんの身体の心配をしながらも、あんな約束をしてしまったことに激しく後悔の念。

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