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□君がそれに気づくまで 3
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ー昼休み。
俺達4人は、いつも揃って教室で弁当を囲む。
それぞれの弁当をくつろげて、今日のデザートはゼリーだとか飯が足りないだとか、他愛もない話をしながら箸を進める。
『ユーリのお弁当っていつも美味しそうね』
『そうか??』
『彩りとか栄養とかちゃんと考えてるって感じだな』
『そりゃどーも。あげねーぞ。』
弁当は自分で作っている。
両親がいないため、掃除や炊事は普通にこなせる。
俺を引き取ってくれたハンクスじいさんの家に住んでいるが、負担はかけられない。
だから、自分のことはなるべく自分でこなすようにしている。
『おうちにユーリ欲しいです!!』
『一家に1人ね』
『おい、俺は家電品じゃねーぞ』
『手芸や家庭科系はオール5ですし』
『数学や化学系は皆無だけどな』
『悪かったな、オール1で。』
わいわい騒ぐ昼休みは楽しい。
家では食事は1人だ。
だから、誰かと一緒に居れば寂しさが紛れる。
もし、この場にあいつが居たら…?
5時間目、6時間目の授業をうけ、HRも終わり、今日はバイトもないから真っ直ぐ帰って風呂にでも入ろう、なんて思っていた時だった。
『ユーリ!!きょうの掃除当番代わってくんない?!』
両手を合わせて拝むように俺の方を見るのはアシェットだ。
『は??なんで??』
『いきなりバイト入っちゃったんだよ…』
『そうか…。まあ、しょうがねーよな。代わってやるよ』
俺が了解すると、アシェットはサンキュ!!と満面の笑みを浮かべて足早に教室を去ってしまった。
『…やるか』
ホウキはもう使われてるから、窓でも拭こうか。俺的には自在ボウキがお気に入りで、先端の曲がる感じがなんとなく好きだ。
やっぱり普通のホウキより自在ボウキのほうが使い勝手がいいよな、なんて自分で納得していた時、いきなり後ろから名前を呼ばれた。
『…フレン』
『ユーリ、今日一緒に帰らないか』
周りから冷やかしの声が上がる。
なんでこんな時に…
『あ、俺、アシェットの掃除当番代わってやったから…』
『だったら待つよ。生徒会室で待ってる。』
ちゃんと来いよ、と有無を言わせず廊下に消えていくフレンに呆気を取られながら、数秒後、我に返った俺はすぐに断らなかった自分に叱咤するはめになった。