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□君がそれに気づくまで 4
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『来ちまった…』
あれから行くべきか帰ってしまおうか悩んだ挙げ句、朝のこともあるので結局来てしまった。
生徒会室なんて場所は知ってたけど来た事なんか無かったから、妙な緊張が体をすり抜ける。
覚悟を決め、いざノックをしようと右手を扉に持ってきた時、あと1cmくらいの所で中から扉が開いた。
『あっ、すみません』
『ああ、いや…』
中から出てきたのは、見覚えのある女の人だった。
確かいつもフレンと服装検査とかやってる人。
猫みたいなつり目が特徴的で、女性らしい体つきをしている。同じ女の俺からみても、充分魅力的だ。
『ソディア??そこに誰かいるのか??』
中からフレンの声がした。
そうか、ソディアってゆうのか。
『あ、はい。下級生の…』
『もしかしてユーリかい??』
扉とソディアさんの間から、ひょこ、と顔を覗かせてみる。
『ユーリ、入ってもいいよ。それとソディア。その書類を先生に届けておいてくれるかい??』
俺が中に入ると同時に、ソディアさんは『わかりました』と言って生徒会室を出ていった。
白い木製のドアが完全に閉まるのを見届けてから、奥の机で書類に目を通しているフレンに向き直る。
『来てもらって悪いんだけど、急に目を通さなきゃいけない書類ができちゃって。ごめん、ちょっとそこに座って待っててくれる??』
フレンに促されるまま、目の前の大きなソファに腰かける。案外座りやすいソファだ。
黙って何かに打ち込んでいるフレンはいつも、1つ上の歳とは思えないほど大人びて見える。
これが小さい時に1人でトイレに行けないと泣きついてきていた奴と同一人物だとは思えない。
こうやって改めて見てみると、睫毛も長く、肩幅も広くて男性らしい立派な体つきをしている。
学園一の秀才で、誰に対しても優しく、誠実で、真面目。正義感が強くて、おまけにこの王子様みたいな容姿。 女性にモテるワケだ。
さっきのソディアさんももしかしたら…
って、なにを考えてるんだ俺は…。
『ユーリ』
『はっ、はいい??!』
いきなり呼ばれたせいで、すっとんきょうな声が出てしまった。
『ユーリ…?どうしたの??』
変なユーリ、と、くすくす笑われた。
ああもう、恥ずかしすぎる。
『終わったよ。帰ろうか??』
優しく微笑んでくるフレンの笑顔は、まるで子供をあやすための笑顔のようで。
フレンから見れば、俺は小さい時から一緒に育ってきた妹みたいなもん。異性としてではなく、ただ家族のような存在。そうなんだ。
そう思うと、なぜか悲しくなった。