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□君がそれに気づくまで 8
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あれから数日がたった。
前よりは目が合う事はあっても、口はきかないまま。
ふと教室の窓から空を見やれば、鳥が大気圏にまで届きそうなほど高く飛んでいた。
街路樹には金色の暖かい光が降り注ぎ、道行く人はその眩しさに目を細める。
『ったく…、平和なもんだぜ…』
頬杖をつきながらポソリと呟くと、歩きながら教科書を読んでいたレイヴン先生に頭を叩かれた。
『ってーな!!なにも叩くことねーだろおっさんっ』
『だぁから、おっさんって呼ぶのやめてって言ってるでしょー』
『ちっ』
『はいはい、平和なのはいいけどちゃんと授業受けてねー』
そこまで言うとレイヴン先生は再び教科書に視線を落とし、何事も無かったかのように黒板に向かって歩き出した。
『はぁー…』
気づけば昼休みになっていた。
さいきんバイトが忙しくて、授業中は大抵眠りに時間を費やす。
『なぁユーリ。フレン先輩さ、付き合ってるって噂だぜ』
『…あそ』
『いいんです??』
『なにがだよ。…フレンに彼女ができよーと俺には関係ないだろ』
…やっぱり、彼女だったんだ。
「「フレン??まだぁー??」」
教室でフレンが楽しそうに話してた女の子。
清純そうで、背も小さくて可愛かった。
…お似合いだった。
『…っ、イチゴ!!食べないんだったら貰うぞ!!』
フォークを大げさに振りかざし、アシェットの弁当箱に向ける。
『ゆ、ユーリ!!イチゴ食べるから!!食べるからー!!』
アシェットとイチゴ争奪戦を繰り広げていた時、中庭が騒がしくなってきたことに気付いた。
『なにかしら』
『喧嘩でしょうか??』
こちらからでは人が重なって見えない。
椅子から立ち上がって目をこらすと、信じられない光景が目に飛び込んできた。