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□君がそれに気づくまで〜夏休み〜
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フレン視点です(^^)
僕達が恋人同士になって、今日で丁度1ヵ月。あと2週間ほどで、誰もが楽しみでやまない夏休みに入る。
小学生の時から幾度となく経てきた夏休み。その夏その夏に、たくさんの大切な想い出を築いてきた。家族でキャンプに行ったり、海で泳いだり、夏休みらしいことはしてきたつもりだが、今年の夏休みは少し違う。それは学生生活最後の夏休みだからという事もあるが、なにより好きな人と1ヵ月過ごせるということ。毎年一緒に遊んだりはしてたけど、今年の夏休みは『幼なじみ』ではなく『恋人』として、一瞬一瞬を大切にしたい。…もちろん、いまだに変化のないこの関係も、なんとか進展させたいと考えてはいるのだが。
『…フレン??どーしたんだ??』
『えっ、や、なんでもないよ!!』
終業式からの帰り道。
なんでもないとは言ったが、なんでもないはずがない。
頭の中は常にユーリのことで一杯で、いま考えていたことを正直に言おうものなら僕は夏休みを迎えずして今この場に朽ち果てるだろう。
『っ、それよりユーリっ、今日、僕ん家こない??』
『…別にいいけど。』
ちゃんとお菓子もあるんだろうな??
そう言って僕を覗き込んでくるユーリは自然と上目遣いになってとてつもなく可愛い。ついでに屈む事で制服の開いた襟元から、ユーリの豊満な胸が零れ落ちてしまいそうで思わず見とれてしまう。
だっ、だめだ!!
まるで身体が目当てみたいじゃないか!!
僕はユーリの自由気ままな所とか、料理が得意な所とか、口は悪いけど本当は誰に対しても優しい所とか、そーゆーユーリの性格と可愛い笑顔が大好きなんだ!!
そりゃあ僕だって健全な男なんだから、胸柔らかそうだなとかお尻小さいなとか思うよ。思うけど!!
それは『好き』の延長線上に位置するものであって、断じて身体が目当てとかじゃない!!だから夏休み中に男女の関係になっちゃうんじゃとか思ってないし、本当は四六時中キスしたいとか考えてないんだからな!!
『…なに百面相してんだ??きもい』
『き、きもいって…、』
毒舌は相変わらず健在だ。
『ほら、着いたぞー』
僕の家はごく普通の一軒家で、小さな庭には母の趣味でガーベラやパンジーなど、たくさんの花が植えられている。
手入れのされた草の絨毯を渡り、少し大きめの扉をいつも通り開く。
『…おじゃましまーす』
『母さんは仕事で居ないよ。』
『え、そ、そーなのか…』
一瞬ユーリが身じろいだ気がしたが、すぐにローファーを脱いでタンタンタンと軽やかに階段を登っていってしまったせいでわからなかった。
『お、相変わらずだな』
僕の部屋を見るなり、ユーリは荒らしようのない部屋だな、なんて口にした。
『男なんてもんは部屋ん中汚くて、ベッドの下にエロい本なんかが隠されてるもんだろーが』
『なっ、君は僕をそーゆー目で見てたのかっ?!』
名誉毀損もいいところ。僕はユーリ以外の女性には興味がないんだ。それにどうせエロ本を隠すならベッドの下とかそんな簡単に見つかりそうな所じゃなく、もっと見つかりにくそうな場所にするよ!!
『とりあえずおやつにする??』
待ってましたとばかりにユーリの大きな瞳が輝く。
『プリン!!クリームのってるやつ!!』
『はいはい、ユーリあのプリン好きだもんね』
ユーリが最近ハマっている『とろーりクリームプリン』。お昼のお供や3時のおやつ、夜食としても常に食べている。甘いものが好きなユーリにとっては、ホイップクリームとプリンの夢の組み合わせが堪らないのだろう。
『待ってて、今持ってくるから』
たったいま上ってきた階段をかけおり、冷蔵庫にしまってあったユーリ用のプリンを取り出す。そしてもう一度2階まで上る。少し走るだけで汗が出るが、僕の部屋にユーリが居ると考えればそんな暑さでさえ気分が高揚して忘れてしまう。
『お待たせユー…っ、ちょ、ユーリ!!』
『は??どーしたんだよ』
『あっ、足!!足しまって!!』
扉を開けると、ベッドの上で寝転ぶユーリが居た。
ベッドで寝転ぶことだけでさえ少し危ういというのに、白くて綺麗な両足を惜し気もなく晒していた。
『寝転ぶぐらい別にいーだろが…』
『足を閉じてくれ!!目のやり場に困る…!!』
『困るとか…、そんなに俺の足が見たくねーのかそーかそーか』
『ちょっと!!足を上げるなっ…!!』
ユーリはわざと下着を見せつけるように、足を交差したりピラリと捲って見せたりする。
その度に僕の心臓は高鳴り、なけなしの理性という壁を削ってゆく。
『ユーリ、いい加減にしないとプリンあげないよ??』
『…プリンよこせ』
やっと大人しくなったユーリにプリンとスプーンを渡し、ユーリのすぐ隣に腰を下ろす。
やれやれと小さくため息をついてからユーリを見やると、美味しそうにプリンを頬ばっていた。
甘いものに対しては本当に従順なのに、たまに悪戯が過ぎる。
『フレンも食うか??』
口の端にクリームを付けながら、僕の唇に触れそうな距離までスプーンを翳してくる。
『ぼっ、僕はいいよ…!!』
『痩せ我慢すんなって。ほら、あーん』
『いいって、ば』
『…じゃあ口移しがいいのか??』
『…は??』
いま、
何て言った??