お題にTRY!スレイヤーズ二次創作小説

□01 友よ、始まりをおそるることなかれ
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「・・・なかなか面倒くさそうな若造がいたもんだ」

「面倒くせぇ上に、とんでもねぇ天然ボケな奴だったな」

自分で言いつつ何か思い出したのか、一人肩を揺らし笑う友人を
俺はまじまじと見ていた。・・・すっかり酔いが醒めてしまった。

あろうことか、この男は旅先で魔族がらみの大事に巻き込まれたと言うのだ。
「魔族」と言えば、その力量で差はあるものの、
一般市民、そして戦い慣れていない戦士にとっては
それはそのまま絶望と死を意味する。

・・・まあ、ここゼフィーリア王都は屈強な人間が多い。
この友人の強さも間接的ながらも知っている。

それ故、魔族と一戦交え勝利した話のみならば
ここまで驚きはしなかっただろう。

「そいつの持ってた剣が・・・伝説の光の剣だった、って聞こえたんだが・・・?」

「おうよ」

ぼけ〜、っと口を開いたまま固まった俺を指さし、
ひとしきり爆笑した後、友は片手を振りつつ

「ま、酔っぱらいの言う事だ。話半分に聞いときゃ良いさ」

こいつがこんな物言いをする時は・・・。
「おいおい・・・勘弁してくれよ〜」
言いながらに俺はテーブルに倒れこんだ。


「お前、その若い友達気に入ったんだろ」

「さあな」

手に入れそびれた伝説の剣。
もし手にし、売っぱらっていたなたら、どれだけになっていたか?!等と
無意味な皮算用に遊びつつ。

グラスを軽く上げ、中年男二人組は、どこか旅の空の下にいるであろう、
その天然の苦労人青年へ小さく酒を掲げた。

「お前さん、リナちゃんに会えるかもとか言ってたじゃないか」

「故郷のそばでうろついてる様じゃ、まだ半人前って事だからな。
・・・そーでもねぇ、と分かっただけ良し!」

「とんだ強がりだねこりゃ」




あの日、二人で飲んだ青年への応援の酒が。






今日、この飲み友達の、青年に対する愚痴と、
娘への嘆きの酒に変わるだなんて。


目の前でやけ酒をあおる友に付き合いながら。


俺は一人、吹き出して爆笑しそうになるのを、懸命に誤魔化し続けたのだった。









01 友よ、始まりををおそるることなかれ  完
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