お題に挑戦!ラッキーマン二次創作小説

□04 反抗期武勇伝
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努力の驚いた顔は当然であろうが・・・。
塞いだ方の洋一まで、目を丸くし。
慌てたように両手を払い、努力から距離をとった。



そして、思わず叫んでしまった。


「あんな師匠師匠言いながらさ・・・!
 そう言う事してたの?!お前って!」


固まってしまった努力に、
洋一もまた、あ・・・!と、凍りつく。

自分の口から出た、
あまりに情けない一言。

まさに、失言と呼ぶにふさわしいそれに、
洋一は努力の顔も見れず、あたふたとし始めて____


「ごめん!!二人の自由なのに・・・!
 今のなし!聞かなかった事に・・・
 

「・・・コンポタージュ缶の底の痕」


へ・・・?と目を点にする洋一に、
努力は口元を押さえ、視線を外しながら言う。


「熱いスープの缶を、麻理亜さんが下さいまして。
 ・・・相談の間中、ずっと持っていたんですけど。

胸を叩かれた際に勢いついてしまっていたらしく、
・・・その、こう「うっ?!!」と」


ぼそぼそと告げながら、空いている方の手で
缶が胸に激突したジェスチャーをする。



「そ・・・っか」


「そうです」


「痛そうな話だね・・・」


「そうでも無いですよ」


気まずいままに、会話が途切れて。

とうとう耐えきれなくなったのか、
努力の肩が震えだした。


「・・・!!笑うなよ・・・!努力!!

 本当、ボクが悪かっ・・・」


そこまで言って。

肩を震わせうつむく目の前の弟子が、
笑っているのではなく、泣いているのだ、と気づいた。


「努力・・・?」


呟くように名を呼べば・・・


努力は涙を両目にあふれさせたまま、
今まで、洋一が見た事のない表情で微笑んでいた。


「師匠は・・・優しい方ですから・・・。

 そんな貴方を、私は知りながらも
 未熟にそれに甘えて。

・・・無理をさせているのだ、と。

 いつも、心のどこかで想っていました」


それでも止められずに、と
言葉を詰まらせる努力。

だが____・・・



「今のは、師匠の嫉妬だと・・・
 そう想って良いですか?
 
 ・・・ずっと見ることの出来なかった、
 貴方の本心はここにある、とうぬぼれても」


泣き顔で囁く弟子に、
洋一の顔が一瞬にて紅くなる。


しばらく視線をキョロキョロさせたのち、喚いた。


「じゃあ聞くけどさ!
 今までなんでボクが、・・・
 二人だけん時に抱きつかれた時とか・・・っ!

 黙って、文句言えなかったか、解るか?!」
 

「・・・日常時の報酬代わりに
 我慢して下さってるのか、と少し想ってました」


「報酬って」


げんなりと努力を見上げる洋一。


「・・・いつも朝迎えに来る事とか、
 不良から守ってくれるとか。
 そう言うこと?」


「あと、変身後の戦闘で・・・
 私にまず戦闘を押しつけられたり、とか」


分かってたんかい、と一瞬頬が引きつるが。
もちろんそんな理由だけじゃない。

引きっていた頬を自ら軽くはたいて、
ビックリ顔の努力を睨みつける。



「報酬ってのはね!
 自分が、「頼んだ」事を相手がしてくれた時にするんだ。

 そりゃ、不良とか宇宙人と戦ってくれるのは
 ありがたいけどさ・・・。

 でも、「ボク」は頼んだ事ないでしょ。
 毎朝迎えに来い、とも、傍にいてくれ、・・・ともさ」


言って、少し視線をそらす。


「・・・感謝してるから、って、
 ・・・だからって・・・。

 ボクはその交換条件みたいに、
 相手の好意に、「うん」、だなんて
 
 ・・・・・頷けないよ」


もし、そんな事の出来る人間なら。
とっくにあの不細工な天才少女に、
ボクは白旗をあげていた、と。
 

ヤケになったように、そう白状する少年。



「・・・報酬でないなら、では・・・?」



ますます顔を紅くする小さな師匠に迫る努力。
逃げたくても逃げられない。
視線を上に下に右左、とさ迷わせたあげく____
洋一は「だ〜〜!!」と叫んだ。


「覚悟してんだろうな?!!」


謎の逆ギレである。


「とうの昔に」


「知らないぞ!?何があるのかボク自身わかんないんだからな!!」


それは自身の不運を指しているのか。
はたまた、ヒーロー時の幸運の余波を指しているのか。
分らないままに、努力はひとまず笑った。


「楽しそうじゃないですか!」


「だ、だいたいさ!師匠が免許皆伝を告げたのを
 拒否する奴とか・・・ボク聞いた事無いし?!」


「だってあれは・・・。あんまりじゃないですか・・・」


言って努力は「あんな風な流れで、ずっとそばにいられなくなるのは嫌です」、と。
切ない声で囁いた。

「うぐっ・・・!」と、言葉に詰まるも一瞬。
大きく深呼吸をして、たまねぎ頭をはね上げて。

腹の底から押しだす様に、洋一は一気に叫んだ。


「師弟も仲間も友達も、こ、こ?!恋人もとか!!
 無茶苦茶過ぎんだろうが!欲張り過ぎると
たいていロクな目に合わないっ・・・ぅか?!
 
・・・どれか一つにしろよ、石頭・・・!!」


肩で息をし、涙目で睨む師匠を、努力は見つめる。

今さらながら、師匠の最初の返事はやはり偽りだった、と。
選択肢の中に、「別れ」が無い事実が胸にしみ・・・
その視界は、再び、涙で歪んでゆく。

くちばしを尖らせたまま、自分の返答を待つ師匠に。

努力は、「まいったなぁ」と言わんばかりな、
しまりの無い笑顔を向ける。


「やっぱり・・・!
全部が良いんです、師匠!!
 
その方が、努力のしがいがありますから!!
 
・・・それに、師匠・・・」


もう何も言えない洋一は、
努力の言葉を、固まったまま聞くしかなくて。


「その分、きっと楽しくて・・・幸せですよ、私達」


暗闇に溶け入りそうな低い声が師弟の間に満ち・・・。
努力を、放心したように見つめていた洋一が小さくうつむく。


「バッ・・・カでしょ。努力も、・・・ボクも・・・」


呟いた洋一の右手が小さく動く。

一体何を、と覗く努力の視界いっぱいに、
真っ白い布地が飛び込んできた。

ふわふわと、はかなげな外灯に照らされた
柔らかい白い色の・・・それはハンカチで。

洋一は、目を丸くした努力に笑い、
その目元にハンカチをあてる。

流れる涙もそのままに、
ハンカチを受け取とれば____


「・・・降参だよ」、と笑い、
静かに、洋一が抱きついてきた。




ずっとずっと一緒にいる、と。




ただそれだけを互いに誓っただけなのに。

不器用で、回り道ばかりの「大好き」を伝えあった
二人は、涙がどうにも溢れて止まらない。


これからだって、二人は不器用で、きっと回り道ばかりだろう。


でも、それで良い。
・・・それが良い、と努力は思った。

幸せを分ち合う為の努力なら、
それすらも幸せのひとつなのだ、と。


滝のような涙を流しながら、
杉田努力は今度こそ。

想い続けた、ただ一人の師匠を_____



積年の想いをこめて、
優しく強く、抱きしめ返した。



















『反抗期武勇伝』



〜お題挑戦・告白シリーズ完〜
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