お題に挑戦!ラッキーマン二次創作小説

□01 質問禁止事項
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第10小宇宙______。



その小宇宙は以前、全とっかえマンが第10小宇宙神に
成り済ました為に、酷く荒れた。


現在の第10小宇宙神でもある、
第3小宇宙神の働きと、周りの援助。

そして大宇宙神の声により、酷い状態だった第10小宇宙は、
今、やっと本来の姿を取り戻し始めている。



しかし、同時に危惧していた問題が表面に現れてきた。

第3・10小宇宙神を兼ねる神の目の届かない所で、
第10小宇宙の弱さにつけ込み、利用している者達がいたのだ。


数は未知数。


どの辺まで広がりを持つ者達かは掴みきれて無いものの、
明らかに、闇に生きるプロ達の動きで。

少なくとも、小宇宙の一角の悪事で満足する
小悪党達の「それ」では無かった。


「NO」を突きつける事の出来ない貧しさにつけ込み、
第10小宇宙の幾つかの星々を、かなり好き勝手に使っている・・・


ヒーロー達を始め、情報を求める者達ならば
自然と耳に入って来る、黒い噂。

目的が何にあるのか。
それを見極めてから、と言う悠長な一部の考えは
大宇宙神と、第3.10小宇宙神の反論により覆される事になる。


二人の手に強く握られた報告書を見た者は少ない。

友情自身、長兄と共に大宇宙神本人から伝えられたが・・・
心底反吐の出る、言葉にもしたくない内容だった。



全とっかえマンが支配し出してから
平然と始まったそれらの悲劇は、今もなお・・・
第10宇宙の星々で続き。

芽を絶つには、長期戦を覚悟させた。

一度手にした都合の良い場所を、利用ばかり優先し
考える者たちが、簡単に諦める訳が無い。


調べれば調べるほどに、知るほどに疑心暗鬼を
周りにもたらす・・・。


それは、実に頭の痛い問題の一つであった。





大宇宙神・・・ラッキーマンに呼ばれた時、
努力マンの姿が無かった事を思い出して。

「なるほど・・・」と、
友情は立ち上がりかけていた腰を下ろし、
静かに、現状を弟に話し始める。



「試験的に一部の星々の援助を絶ち、
 また、流通の全てを止める決定が出た。

 最初に痛手を受けるのは、星に住む住人・・・
 その中でも、抵抗する力の弱い者達からだろう」


「・・・!!?

 からだろう、って・・・!!
  師匠は、それを・・・


「分かってる。・・・でも、
 それしか無かったんだろうな」


表面上違う理由をつけ、時間稼ぎをし。
その実、第3.10小宇宙神と大宇宙神の厳重な監視下に置く。


「この情報が方々に漏れ出たとたん、動きがあるだろう。
 水面下に隠れた動きさえ、彼らは見逃さないつもりだよ」


「嘘でしょう・・・?
 そんな乱暴で愚かな方法、許すはずが無い。
 師匠が、一番嫌う種類のやり方です・・・!」


首を横に振る努力に、それでも友情は続ける。


「・・・欲しいのは、完全な確証だろう。
 それさえ掴めれば、事は確かに動く。
 良いも悪いも、な。

 材料が揃えられれば、すぐさま救済が行われる。

 今回だって、悪い様にはならないはずさ。
 彼は「ラッキーマン」なんだしな。

 ・・・さすがに、今回ばかりは
 ラッキービーム撃って一件落着、
 なんて訳に行かないだけさ」


後半はだいぶ希望的な読みが強いな、と。
友情自身、自覚して小さく息を吐く。

 
「大義名分など、聞いていません!!」


「ここで努力の怒鳴り声を聞いても仕方ないよ。
 もう、決まってしまったんだ」



手の平を、努力の真っ直ぐな視線を
遮る様に突き付ける。




苦しげに俯き、黙ってしまった弟を見て。

友情は、その「師匠」の心の内を僅かながら
理解出来た気がした。



笑ってられなくなる自分と、
そんな己につられ、辛くなるであろう弟子。


いつかどこかで食い違う日の事を。


努力の慕う、「師匠」で居続けられなくなる
可能性を、まだ年若い地球の少年は想っていたのか。


揺れ動く感情の狭間で、懸命に
それを悟られない様に。

努力と笑いあう時間が曇らない様に。


良い師匠、努力に喜ばれるだろう自分、を
彼なりに考え、貫いていたのだろう。



それはまた、随分と大切にされたものだな、
と友情は思う。



ラッキーマン‥‥洋一少年は、
自称弟子を本当に大切に愛している。

弟子自身が感じているよりもずっと、
か弱い師匠は弟子を想い、守ろうとしている。


今回はそれが極端に現れ過ぎて、
かえって、違和感を浮き彫りにしてしまった様だが。



「彼は・・・努力にまで背負わせようと思っていないのかもな。
 
 だから、何も言わない。
 お前に、それを分って欲しいとも。
 
 それは・・・
 今の努力には、キツイ事だ、と。
 そう判断したからじゃ無いのか?」



「努力」、と黙り込んでしまった弟に呼びかけた。



「洋一君、の基本はきっと、いつも同じさ。

 あの子がまだ、笑えてる今のうち、
 何とかしておくんだね。
 
 でないと・・・いざとなった時、
 迷うことなく一人で別れを選びかねないよ」


「・・・私の心配は、方向が違っていたんですね」


正座する両膝の柔道着をぎゅっ、と掴みながら
努力は声を押しだす。
今頭の中は、自らの師匠の事でいっぱいなのだろう。


「少しずつ減らしてかないと、な。
 彼の中の罪悪感も、罪も。
 そう、辛くさせてる努力の態度も」


「私の態度、とは?」



脳裏に浮かぶ幾つかを、
言葉にしかけ・・・

次兄はそのまま何も答えず、首を横に振った。



「ま、色々思いあたるさ。

 でもな、他人から聞きだして直す様な
 付け焼刃なものが、本当に彼に届くか?
 それで、「救える」と思うかい?」



誤魔化しや、甘えを許さない静かな口調で言う。
いつもは人当たりの良い友情が持つ、厳しい一面。

一部の者たちしか知らないその顔を前に、
努力の目蓋が瞬き。

口を閉ざし、力強く瞳を燃やす。


少しの間をおき、「自分自身で、探します」と
深く頷いた弟に、友情は小さく微笑み。


何も言わず、親友と共にテントを出た。








「実際、どうなんだろうねぇ」



テントに近い公園のベンチに腰かけて。
まだ、中で思案しているらしい様子を
感じ取りながら、友情は呟いた。

口数の少ない友情の親友はただ、
「ガル・・・」と唸るだけで。


正直、弟が師と仰ぐ少年は、もうとっくのとうに
努力に対する理解を諦め、勘違いを放置した上で
傍に置いているのだと・・・

良いも悪いも、この事に関しては
深く考えてはいないのだ、と思っていた。


そして、勘違いも全てひっくるめた上で、
弟の事を好きでいてくれているのだ、と。


たぶん、それは大きく間違った考察では無い。


幾多の者達との「友人」としての経験が、
友情のこの認識を後押ししている。



二人とも一時の気の迷いである、と。
麻疹の様な恋、と判断したままなら、

『少しずつ減らしてかないと、な。
 彼の中の罪悪感も、罪も。
 そう、辛くさせてる努力の態度も』

この一言を言う事は、きっと無かっただろう。



事実、明らかに両想いの師弟を、
見ている方がもどかしいが故に_____

とりあえず一回きちんと向き合っとけ、と
面白半分で肩を叩き、送り出したのも事実。



だが。
今の努力の話を聞いていると、
ラッキーマン・・・追手内洋一少年は、
本当に努力を想ってくれている。


また、友情の知らない一面を・・・
そっと隠しているようでもあった。


天才マン、そして自分達の兄は、
何かを知っているのかもしれないが。

そこまで思い、初めて。
時折感じた小さな疑念の数々を、
まだ、兄と話していない事に気がつく。



本来告げるつもりの無かった一言は、
今になり、言葉以上の重みを友情に予感させた。



何とも面倒な事を言ったものだ、と思ったが
言った以上、責任は取らねばならない。
それに何だかんだ言いつつ、
大事な弟と、友人に関する事だ。


この世に、追手内君とみっちゃんを
「ムフフ」にする約束以上に、面倒で困難な話も少なかろう。


静かに黙り込んでいた友情が、急に小さく笑いだした為、
隣で様子を見つめていた一匹狼マンは目を丸くする。

そんな一匹狼マンに友情は「なんでもないよ」、と
片手をひらひらさせて。



「僕は、「友達」って本当たくさんいるけど・・・
 時々いるんだよね。

 大変でも、大きな喜びを感じさせてくれる
「友」、って言うのが。

 ・・・友達が出来ることは、素晴らしく楽しい。

 もう一つ言うならば、その子の、
 今まで知らなかったところや、
 成長を見つけられたりするとね。

 同じ位、時にはそれ以上に、嬉しいものだよ」



言って、ひらひらさせていた手の指で、
額をチョン、と軽く突く。

額に手を当てて、キョトンとする一匹狼マンの顔に
友情は微笑み、立ち上がった。



「さて、と。少し寄り道して行こうかな」


どうやら真っ直ぐ帰宅するのでは無いらしい。


いつもの調子で軽く言う彼と。
そんな姿に、もう慣れてしまった親友のその上を、
細長い線を描きながら、飛行機が高く飛んでゆく。



楽しげに雲を見上げながら、
友情は友を傍らに歩き出した。


















『質問禁止事項』・完
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