お題に挑戦!ラッキーマン二次創作小説

□10 夢を奏でし異形の者
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先ほどまでの洋一少年の笑顔が、今は酷く遠い。



いったいどうしたら、この窮地から洋一を救えるだろう。



重い鈍痛と、先ほどの攻撃により濁る視界。

だがここで自分が気を失えば、全てが終わる。



おつきマンは朦朧とする意識の中で
自身の不覚を息苦しいほどに自覚し、悔やみながら・・・


周囲の位置関係を藁をもすがる気持ちで確認し、
必死に逆転の糸口を探し続ける。


すぐ手元にプレゼントが落ちてはいるが、
それを投げつける事さえこの身体では出来そうにない。


殺気をむき出しに相手を睨みつけるおつきマンを、
見慣れた給仕係が愉快そうに赤い瞳で見ていた。


普段とまるで変わらない姿。制服。

本人がいつも気にして嫌がっている小鼻の上のホクロ。


そのひとつひとつが、気配が、目前の相手が給仕本人であることを示している。


温和な表情で微笑む筈のその顔に、見た事もないニヤリとした
笑みの形を作り、「彼」は言った。


「大宇宙神とやらに・・・
 ラッキーマンに会わせろ」


聞き取りにくい、低く威圧的な声。


おつきマンの恐怖はさらに大きくなっていく。


なぜなら給仕は今、何者かに完全に操られている事実。

そしてその敵は、給仕が拘束している少年の
正体を知らないでいる、と気づいたからだ。



これ以上事態が長引けば、卑怯にも給仕を乗っ取った凶悪な敵は
腕の中の命を奪う可能性が高い。



人質も交渉の道具も、「二つ」は必要ないのだから。



「頼む!!!目を覚ましてくれ!!!」


おつきマンの叫びが部屋中に響き、空しく溶ける。


心から守ると誓っていた人を失う・・・
あんな想いを再び味わうことだけは。


おつきマンの視界が揺れる。
それが涙だと、今は認めたくない。


しかし、あざ笑う様に世界はみるみる霞んでゆく。


遂に大きく声を上げ笑いだした給仕と、その腕に捕らえられたままの少年。


悔しさと怒りに全身を震わせ、なんとかして物を投げつけようと視線を動かす。


だが、どうした事か手元にあったはずのプレゼントすら見あたらない。


「ああ・・・・・」


全ての手段は尽きてしまった。


絨毯の上におつきマンの涙がとめどなく零れ落ちる。



その脳裏に、この星のかつて持ち主だった人物の優しい笑顔が浮かんだ。




幻でもなんでも良い。

どうか・・・






助けて下さい。







おつきマンがそう、姿なき神に願おうとしたその時。





『うるさいな〜』





大宇宙で一番、空気を読まない声が部屋に響いた。
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