小説
□日常
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「…なんで帝人がここにいるのさ」
臨也が学校から帰ってくると、料理本を片手に料理をしている帝人がいた。
「あ、お邪魔してまーす」
「お邪魔してまーす、じゃないよ!学校休んで何やってんのさ!?」
学校で帝人は、熱で欠席ということになっていた・・・のだが明らかに元気そうである。
そんな事より帝人は臨也が常識的な台詞を言ったことに対して固まっていた。
言葉にすると、あの非常識な臨也さんが常識的な台詞を言う日が来るなんて…録音しとけばよかった。
というような感じである。
「……?…料理ですけど?」
「それ俺の家でする必要あるわけ?」
「そんなの調理器具が揃ってるからにきまってるじゃないですか」
何言ってるんですか、とでも言いたげな目を臨也に向けた。
「まぁそれはわかったけど…だいたいなんで未だに敬語なんだよ」
わかってはいないがそういうことにした。
このままじゃ永遠この会話が続く。それでは余りにも面白くない。色々と。
だから、話題転換として一年の時から思っていった疑問を問いかける。
「気にしないでください。それが僕の臨也さんに対する心の距離ですから」
「ええぇ・・・じゃあ、俺が帝人に敬語じゃないのはそれが帝人に対する心の距離ってことで」
とだけ言うと、臨也は自室へ鞄を置きに行った。
ふわぁ、と欠伸をすると帝人は今まで止まっていた料理を始めた。
因みに今、帝人が作っているのは何でもないただの味噌汁である。
(味噌汁を飲んでる臨也さんって何か…非日常!!)
と考えてからの帝人の行動は速かった。生憎そこには、その非日常はただ単にミスマッチなだけだろ!?とツッコミを入れてくれる親友はその場にはいなかった。
学校へ休むことを伝え、味噌汁の材料を買いに行き、臨也の家向かうまで約20分。
だが、帝人は一番肝心なことを忘れていた。
幾ら帝人が早く行って味噌汁を作っても、臨也は学校に行っているのである。
このままでは作った味噌汁は冷えきる・・・そして何より帝人が暇なのであった。
空いた時間は携帯電話を弄ったりして過ごしていたのだが、ほんの少しの感じた寂しさを紛らわすために、もう一度買い物に出かけることにした。
買い物に出かけるのは、ただ寂しさを紛らわせるだけではない。
――――闇鍋ならぬ、闇味噌汁を作るために・・・だ。
そんな闇味噌汁の味を知るのは二人だけ。どんな味だったかは本人たちのみぞ知る。
ただ絶叫が響き渡ったのを近隣の住民たちは知っていた。