drrr小説

□手遅れ(境界線と夢ver)
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机の上一面に新聞を広げる帝人。


そこには、
『死者、街を歩く!!』
という、とても信じ難い見出しがあった。

見出しの下にある写真には、頭から血が滴り目は濁りきっている人間。…の筈だった生き物が徘徊している様子が写っていた。
ちなみに今日はエイプリルフールでは無い。



「これ、どう思う?」
帝人は目の前に座っている正臣と杏里に問いかけた。


「死者が街を歩く…ゾンビって本当にいるんですね」

「日本は幽霊じゃなかったのかよっ…!」
苦々しい表情をしながら机を叩く正臣を見て…

「「そこですか(なんだ)」」

帝人と杏里の二人は正臣のズレたツッコミに、ガックリと肩を落とした。

「え!?俺なんか変な事言ったか?」
わけのわからなさそうな顔をする正臣を見て、二人は更に溜息を吐いた。

どうやら正臣はちゃんとツッコミしなければ二人もきちんとボケきれないらしい。




本人の自覚は全く無いが、意外に重要な役割を担っていたのであった。




「まぁ、それは置いとい…」
途中で言葉が遮られた。

玄関の方からドンドンッと、扉に体当たりでもしているかのような音が室内に響いたからだ。


先ほどの新聞のこともあり、三人の間に緊張が走る。


無言でいる間も玄関の方からの騒音は途絶えない。
もはや緊張を超えて、イラつきすら感じさせるレベルだ。



「・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」


このまま永遠に沈黙が続くかと思われたが…ガタリッと今もなお、途絶えない騒音とはまた違った音がした。


パタパタパタ


それはスリッパを履いたままの帝人は玄関に向かった音だった。



慌てて正臣と杏里が止めようとするが時既に遅し。
その時既に帝人は、玄関の前まで来ていた。




「・・・近所迷惑ですよ・・・よっ!!」
半端じゃない勢いで開かれた扉は、密接していた何かを押し潰した。



挟まれた何かの感触を感じて帝人は・・・

あ、やっちまった。
いや。殺っちまった。

数秒、思考がフリーズした。



なんとか思考が回復すると、帝人は何事もなかったかのようにゆっくりと扉を閉めた。


リビングの方に帰ってくると帝人は
「何でもなかったよ」
冷や汗をだらだらと流しながら言っても、説得力の欠片も感じさせない言い訳を呟いた。


「その顔・・・絶対嘘だろっ!!」
やはり嘘だと見破った正臣が玄関へと走り去る。

その背中を帝人は止めるわけでもなく、ただ生温い目で見つめていた。




玄関の方からバンッと思い切り扉を開く音が聞こえた。


暫くすると正臣が、顔面蒼白でリビングに帰ってきた。
おそらく正臣も、や(殺)ってしまったのであろう。



「確かに、何でもなかったな」
真っ青な顔で言っても、やはり説得力の欠片も無い。



「紀田君まで・・・・・・あ」
杏里も椅子から立ち上がり玄関に向かう。



開きっぱなしの扉の後ろから腕が一本ちらりと見えた。
腕がちらりと見えたところで(パンチラならまだしも)嬉しくとも何ともない。寧ろ怖い。


誰がどう見ても異常な光景に、一切怯むことなく杏里はその腕の脈を測る。



「園原さん・・・」
短いが、その言葉には「その屍体、脈ある?無い?」という意味は含まれている。

そんな帝人の言葉に、杏里は首を横に振った。








沈黙が痛い。





三人は気付かない。

屍体に脈は元から無いことに。





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文才は管理人は三時のおやつに食べました。

ギャグじゃない・・・寧ろカオスだ。












  

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