黒子のバスケ 小説

□喋れない黒子と不幸体質な緑間の話
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注意!

これは三話目なので、前回前々回を見てない方はそちらの方を先に見ていただいた方がわかりやすいかと思います。
駄文と誤字の間にやおいが産まれました。
赤黒シリーズなのに緑間と黒子しかいない。
見なくても、続きを見るときに支障は無い筈です。
最後で気が抜けました。
完結する予定は無いです。

上記のことが、平気もしくはばっちこいな方は下へスクロールどうぞ!





























書室に伸びる二つの影以外、何も動かないこの部屋で、カリカリとシャーペンの芯が擦れる音だけが唯一の音だった。 影の一人が身動ぎする。そして壁に掛かっている時計を見ると手に持っているノートにさらさらと文字を書いた。
【緑間君、時間、大丈夫ですか?】
ノートに書いた文字を見た緑間はちらりと時計に目線を移すと
「まだ、大丈夫なのだよ」
と筆箱の中からシャーペンの芯を出しながら頷いた。
影はその返答を聞くと、また机に向き直った。緑間は窓から夕日で逆光になっている影——黒子を見てぼんやりと出会った当初を思い出した。


——小学校三年生の時である。




***






小学校三年生の秋、一人の転入生がクラスに新しく仲間入りをした。
転入生の黒子テツヤという人物は、一言でいうならば変わり者であった。影が薄く無表情で一言も喋らなかった、いや喋れなかった黒子は一部では幽霊じゃないのか、という噂が立つこともあるほどである。
緑間は後ろの席に座っている、その噂の人物に前から配られてきた配布プリントを渡す。
何も映らない硝子のような瞳が緑間を一瞬見て、その後配られたプリントを手にとった。
担任が朝のホームルームをしているが、ロクに聞いてるものなどおらず怠惰な時間ばかりが過ぎていく。おまけに空色も悪く、じめじめとした空気を作り出していた。
緑間が鉛筆でも削っておこうか、と思ったその時、後ろからつつかれた。疑問符を浮かべながら緑間が振り返ると、黒子が小さな折り畳んでいる紙を差し出してきた。
「何なのだよ…?」
紙を開いてみると用件が一言簡潔に書いてあった。
【消しゴム二つあったら、かしてくれませんか?】
几帳面な字で書かれた言葉。消しゴムは一つ、予備があった。緑間はその紙に、わかったのだよと追加して消しゴムと一緒に後ろにまわした。
暫くしてまた紙が一枚後ろから渡された。
【ありがとうございます】
緑間は書くスペースの無い、小さな紙を机の上に置いて自分のノートを小さく千切った。そしてその紙に、たいしたことじゃないのだよ、と書いた。先生がこちらを向いていない隙に後ろにまわす。何てことの無い日常風景だったが、緑間は認めることはしないだろうが、確かに嬉しかった。

緑間真太郎は自他共に認める不幸体質である。
例えば彼が入ったチームは必ずといっていいほど負けたり、何も無い所でよくこけたり、マンホールが何故か開いていて、それに嵌まったり…蜂に襲われたことなど片手では足りないほどだ。
前には頭上から花瓶が落ちてきたこともあった。
そんな超のつくほどの不幸体質な緑間は、直接虐められているわけではないが、確実にクラスメイトから避けられていた。
そうして他人と関わる機会が、同年代の男女に比べ異常なほどに少ない緑間は数少ない友人と呼べる者の存在は非常に大切なものだった。もっとも中々口にはしないため相手には殆ど伝わらないのだが。















クラスに忘れ去られたかのように、存在感が薄い黒子と不幸体質のせいでクラスから意図的に避けられている緑間はよく二人組を作るときにペアになった。
ペアになる度に不幸体質な緑間だけでなく、ペアである黒子にまでその不幸は降りかかる。緑間はそれがいつも嫌で仕方がなかった。
けれど、黒子以外に組む人もいないのでやっぱり不幸はべったりと付きまとっていた。
二人三脚の時は、見事なまでに足が揃わずゴールすら出来なかった。ボールの軽い投げ合いも検討違いな方向へ飛んでいき、ボールが五つ無くなった。
…数えればキリが無い。あるとき緑間は黒子に聞いたことがあった。それは二人で作った共同美術作品が、何故か木っ端微塵に壊れていた時だ。
「…黒子は…嫌じゃないのか…?」
俯いたまま問いかける緑間に黒子は小さな紙を使って返す。
【何がですか】
「…俺といるといやなことばかりおこるのだよ」
黒子は緑間の言葉に小さく溜め息を吐いた。表情は変わっていなかったが、呆れたように緑間には見えた。
【いやだったらボクは君とペアなんて、くんでませんよ】
少々いつもより文字が震えているように見えて、黒子は表情より文字に感情が出るのだな、とどうでもいいことを考えた。
そう考えないと思わず変なことを口走ってしまいそうだったからである。緑間は眼鏡を上げて照れたように言葉を紡いだ。
「…俺もいやではないのだよ」











ふっと意識が過去から現実に巻き戻った。
気が付かないうちに緑間は微睡んでしまっていたらしい。
頭に違和感。触ってみると小さなお団子に結ばれていた。(変な所で器用な奴め)
緑間はもう一つの団子を人の頭にこしらえようとしている手をガシリと掴んだ。
「何をしているのだよ、黒子」
ビクリと掴んだ手が硬直する。その直ぐ後頭の上で音がして、一冊のノートが差し出された。
【やっぱりバレました?】
全く反省の色が見えないその言葉に緑間は息を吐きながら呟いた。「バレバレなのだよ…」
黒子がまた紙に何かを書く。じっと緑間の手首辺りを見ながら。
【そのミサンガ…まだ使ってくれてるんですか】
緑や水色など比較的大人しい色合いの糸を使って編まれたミサンガが、緑間の手首にあった。
「自分で切っては駄目らしいからな」

このミサンガは、緑間がおは朝を見るようになった原点ともいえる大切なものだった。
黒子が小学生のころに、お守りと評して緑間に渡したものである。案外丈夫に編まれたそれは数年の月日がたった今でも切れる様子は無い。
その事に嬉しいような悲しいような、妙な気分になりながら緑間は今日もミサンガをつけていた。

【丈夫に編みすぎましたかね…?】
相変わらず黒子は無表情なままだったが、緑間は黒子が苦笑しているように感じた。表情には出なくたって文字に表れるのは小学生のころから知っている。
「全くだな、…別に気にはしてないのだよ。今は切れなくたっていずれ切れるものなのだからな」
幾分か寂しげに響いたその言葉に黒子は遠くを見た。

かつて繋がりが切れた、赤髪の幼なじみを思って——…

















【没案!】

とっても短いよ!






【丈夫に編みすぎましたかね…?】
相変わらず黒子は無表情なままだったが、緑間は黒子が苦笑しているように感じた。表情には出なくたって文字に表れるのは小学生のころから知っている。
「全くだな、…別に気にはしてないのだよ。今は切れなくたっていずれ切れるものなのだからな」


どこか寂しげに響いた言葉に黒子がツッコミをいれる。紙でだが。【シリアスな所悪いですが、お団子へアで言ったら笑いしか生まれませんよ】

色々とぶち壊しになった。

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