黒子のバスケ 小説

□ヤンデレキセキのお話
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キセキの世代について知りたい?
君もかなり物好きというか…まあ、彼らのことについて知りたがる人は沢山いますし、別に構いませんが…。
…悲しいかな、キセキの世代には変態しかいませんよ。君も知ってるでしょうけど。
彼らの性癖を否定するわけではありませんが、そこにボクを巻き込まないで欲しいです。切実です。
え…どんな性癖?…ですか。
…例えを上げるなら、モデル(笑)として有名な黄瀬君でしょうか。

あ、何となく察してます?
…多分それであってるかと思います。



黄瀬君からのメールは一日百件が当たり前。何故かボクの予定も全部把握してますし…まあ、それは赤司君もですが。
黄瀬君と一緒にいると…その…物がよく無くなります。

それらから何となく、おかしいなとは思ってたんですけど、それが確信に変わったのはいつだったでしょうか…?
まだ暑い時だったと思います。



照りつける太陽が真上に来ており、夏休み特有の解放感ではなく、暑さにより意識が朦朧とし始めた時。
黒子はどこか遠い目をしながらメールの着信履歴を見ていた。
夏休みに入ってから更に黄瀬のメール攻撃が酷くなっていた。モデル仕事しろ、と思わずにはいられない。
現実逃避をしている間にも、ぽたりとコンビニで買ったアイスが溶けて手を伝って落ちていく。
アイスは公園で食べるべきではありませんね…と黒子がべたべたになった手をタオルで拭きながら内心で呟いた。
そのタオルは座っているベンチの上に置いた。
そう、確かにボクは置いた。置いてあったはずなのだ。なのに、無い。

一瞬目を離した隙に跡形も無くなっている。何故だ。


脳内が混乱に包まれる中、プルルと携帯が手の中で震える。そしてそれを反射的にとった。

「もしも『黒子っち黒子っち黒子っちもうアイスを溶けちゃうのに公園でゆっくり食べちゃうちょっと抜けてるとことかマジで可愛いッス溶けたアイスが手に付いてるとことか誘ってるんスかあぁあああ襲いたいんーこのタオル良い匂』黒子がこれ以上耐えきれないといわんばかりの表情で、携帯電話の電源を切った。

そして確信する。――黄瀬はストーカーだと。(信じたくはないが)

あのまま電源を切らずにいたら、きっと永遠話し続けたであろう。
黒子の体力と精神力は、夏の暑さ&黄瀬の攻撃により真っ赤に点滅していた。
――それにしても何故ボクをストーカー?…もしかして黄瀬君、暇なんでしょうか…。
モデルはそんなに簡単な仕事ではないだろうに、と黒子はぼんやりと友人の趣味について考える。
黒子の中で黄瀬は、【好きだからストーカーになる変態】ではなく、【趣味でストーカーをしている変態】になっている。

そのため他のキセキの世代全員にやっているのではないか、という疑いさえ持っていた。

もし、それを本人が聞いたら泣きながら色々なことを語るのだろうが、生憎黒子はそれを口に出してはいない。
口に出してもいないことを訂正できるのは、それこそ赤司ぐらいなものだろう。

黒子は食べ終えた…というよりは溶け終えたといった様子のアイスを片手に持って、公園を立ち去った。








…予想通りでしたか?

ええ、そんなこともありましたね。
次は誰について話しましょうか…。…妖精こと紫原君でいいですか。

はい。わかりました。




紫原君だけは、まともだと思ってたんですけどね…。

洒落にならないほど強い、身の危険を感じました。
普段は妖精さんなのに…。………あの、人の落ち込んでる姿を見て笑わないでください。

そんなに受けたいんですか?

イグナイト。


ある部活帰り。青峰は黄瀬とともにストバスによるらしく、どうしても今日は早く帰らねばならない用事のあった黒子は渋々ストバスを諦めたのだが、桃井も赤司もまだ学校に残らねばならず必然的に帰るメンバーは黒子と紫原の二人になった。
もうすぐ沈むであろう太陽が黒子と紫原の二人を照らし、二人の背後に長い影を作っていた。

背後に伸びる影を見た黒子がその長さの違いにしょんぼりしかけたが、よくよく考えてみれば影だけの話でなかったことに気づき、つい口から重い溜息が漏れた。

「どうしたのー?黒ちん?」
「いえ、自分の身長に絶望していただけですから」
「えー、黒ちんはそのままでいいと思うけどー」
久しぶりの、いや…もしかすると初めての二人だけの下校に普段より会話の数が多くなる。
本当にバスケさえ絡まなければ今よりきっと仲の良い友人になれたのに…と黒子は若干遠い目をしながらそんなことを考える。
だが、バスケをしていたからこそこうやって知り合うことが出来たことも、勿論黒子は知っていた。だからそれはあるはずのない想像。
それにバスケをしていたって友人同士であると少なくとも黒子はそう思っている。
だからいいのだ。これで。

そう考えると自然にくすりと笑みが零れた。

「何か面白いことでもあったのー?」
不思議そうに紫原は問いかける。ゆったりとした足取りは止めずに。
「こうして紫原君と二人で下校してるのって何だか不思議な気がして…」
もし。もしも黒子がバスケをしていなかったら。もしも紫原がバスケをしていなかったら。
成り立たなかったであろう光景に。

意味がわかったのかそうでないのか、無邪気に浮かべられた紫原の笑みに、黒子はつられるように目を少し細めて笑った。

分かれ道に来た時に紫原が今までの話から突然話を切り替えた。
「俺がお菓子好きなの黒ちん知ってるよねー?」
「スナック菓子も好きだけどさ、甘いお菓子も良いよねー」
「チョコとかケーキとかさ…」
返事を待つことなくつらつらと流れるように紡がれる言葉の数々。

黒子の背筋に冷たい何かが這い上がってくるような寒気がした。
「…そうそう、黒ちん知ってる?」
―――人の肉って甘いんだよ。
そう言って笑う紫原。…え、と事態が飲み込めず茫然とした様子の黒子の首に鋭い痛みが走る。つぅーと首筋を一筋流れる液体はきっと。
「…ッた!!…何するんですか!紫原く…ん」
最後黒子の言葉が聞き取れないほど小さくなる。本能的に?それとも理性で?
どちらにしよ、黒子はその時本気で身の危険を感じた。

――このままじゃ…物理的に食べられますッ!

紫原のいつも通りの無邪気な笑みが今は、黒子にとって恐怖の対象でしかなかった。

部活でも出したことのないほどの速さで黒子はその後、紫原と鬼ごっこをした。


逃げる方にとっては、命がけの。









あの…意外なとこに伏兵がいたって何のことですか…?

…はあ、気にしなくていいんですね。
首の傷はもう消えましたよ?
…はい、紫原君も本気で食べるつもりは無かったみたいで。
まあ冷静に考えればそうですよね。なんかボクだけが過剰反応したような…。
…取り敢えず彼には噛み癖があります。
…あ、そういえば氷室さんは大丈夫なんでしょうか…?心配です。

えっと、次は紫原君つながりで赤司君のことについて話しますね。
…もしかして赤司君が最後の方が良かったんですか?
…でも緑間君はもう知ってるんでしょう?
なら赤司君しかいないじゃないですか。
つまりこれが最後です。何かおかしいですか?
…気にしないでください。

あんなことボクの口からは語れませんから。本人に聞いてください。
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