長編
□春
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小さな小窓から部屋に朝日が差し込む。
聞こえる小鳥の鳴き声が今日は心なしかいつもより、楽しそうな声色だと思ったのは春の訪れを感じさせるような暖かさがあったからだろうか?
そんな小鳥の鳴き声をかき消すかのようにけたましい音が鳴り響く。
その音が鳴り響いてから約一秒。
帝人は飛び起きた。
「え?…けーさつ?……?…もしかして…バレた?…ん?ぅうん?」
目が覚めたばかりで、虚ろな目とうまく回らない頭では何が起こったかよくわからない。
実際には目覚ましの音がパトロールカー…通称パトカーのサイレンの音だった、という訳だ。
ぼんやりしていて殆ど寝言に近いとはいえ・・・少しいや、かなり気になる台詞を呟いていたがいったい何が「バレた」のだろうか?謎だ。
「帝人ー!起きてるかー!」
「ん…起きてるよ…あぁ、この目覚まし、目覚めが最悪なんだ…けど…」
帝人はバタンッと布団に逆戻りした。
「二度寝はするなよー!」
部屋の外にいて中の様子はわからない筈なのだが、何故今二度寝しようとした直後にその台詞。
正臣はエスパーなのか、それとも宇宙人なのかもしれない。
そんなありえない想像をしてしまうほどには、帝人は寝ぼけていた。
正臣はそれだけ言うと杏里を起こしに、バタバタと駆け足で走っていった。
朝から忙しいね、正臣は…。
若干遠い目をしながら帝人は一人心の中で手を合わせる。
正臣がいなかったら毎日遅刻するはめになっていただろう。
(正臣が家にくる前は帝人はチャイムの音で起きていた)
帝人も弱いが杏里は桁が違う。壊滅的に弱いのだ。
そりゃもうナマケモノも全速力で逃げ出す程に。
帝人は一人で杏里を起こしにいった正臣に加勢する為に、布団を畳始めた。
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