長編
□許さない
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注意!今回の話はギャグ要素は皆無です。(超シリアスです)
本格的に帝人様降臨しちゃってます。
お気をつけて!
暗い路地裏に一人の青年というには若い、竜ヶ峰帝人の冷ややかな声が響く。
「私とあの二人の前に、二度と現れないでください」
冷えきった瞳で目の前に崩れ混むようにして座り込んでいる、自分と対して変わらない年頃の彼ら彼女らを睨み付ける。
そんな彼の手にはボールペンが握られていた。
そのボールペンに付着した液体から鉄くさい臭いが漂う。
許さない…彼らは私の日常(スベテ)を壊そうとしたのだ。
それなりの罰は受けて貰おう。
それぐらいならあの二人も許してくれるだろう。
くすりと今の自分の姿を見て自嘲する。
何が許してくれる、だ。
例え許さなくたって僕はこうしただろうし、許されたからってだから何なんだって話だよね…やっぱり気分的な問題かな。
そこまで考えた後、もう一度目の前にいる彼らに目を向ける。
顔は恐怖に歪んで、口から嗚咽が洩れるが、それを見ても、もう何とも思わなかった。
…先ほどまでは、そんな姿に僅かな嗜虐心が湧いたのだが、なんというかもう飽きた。
だからと言ってこのまま帰すつもりはない。
帝人は手足を縛られているせいで、まともに身動きがとれない彼らの口元に、予め薬品を染み込ませておいたハンカチを押さえつけた。
今まで痛みや恐怖の為にろくに動かなかった彼らだが…
流石にハンカチを当てられてからピクリとも動かなくなった仲間を見て恐怖が己の限界を越えたのだろう。
「ぁ…嫌…ぁああぁああああぁああぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
彼らの一人がまるで発狂したかのように叫び声を上げた。
一人が叫びだしてから他の仲間もつられるように、喋りだす。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい二度としませんだから…許してくださいお願いしますごめんなさいごめんなさいすいませんだからだからッ」
「何で何でよぉおおおおお!違っあ、何で私はただ、ただ!ぁああぁああああああああああ」
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だこんな筈じゃ無かったのにっ何で何が起こってるんだ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だこんなこんな」
喋るというよりはただただ思いのままに吐き出しているだけ。
「五月蝿い」
そんな彼らに帝人は一言そう吐き捨て、叫び続ける彼らの中の一人に喉元にボールペンを突き立てた―――――