黒子のバスケ 小説
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唐突に全てを思いだした黒子は、ぼんやりしたままマジバを後にした。
あそこは人間観察はしやすいけども、一人でゆっくり考えるのには向かないから。
自室に帰ると、そのままその場で崩れ落ちるようにして壁に寄り掛かった。
「何なんですかね…」
わけがわからなかった。
それはそうだ。突然自身の許容量を超える記憶を思い出したのだから。
しかもその大半が苦い記憶ときた。
トラウマになってもおかしくはない。
けども、黒子の中には記憶に対する困惑はあれど恐怖は感じなかった。
そのことに何の疑問も感じることもなく、古びた記憶を二十年ぶりのタイムカプセルを開けるような気持ちでゆっくりと整理し始めた。
最初出会ったのは青い彼だった。
二番目に出会ったのは赤い彼でその次に紫の彼…
四番目に緑の彼に出会った。
最後に黄色い彼。
皆、強い強すぎるほどの光を持っていた。
そして彼らはいつの時代も独りだった。
ある人はその強すぎる力を制御しきれずに…
またある人は孤独に苛まれて、
そうして緩やかにあるいは急に狂っていった。
僕は彼らに笑っていてほしかった。
光が狂えば影は影であれなくなってしまう。
揺らいで不安定な影ではいつかはその強すぎる光にかききえてしまうから。
―――――きっと僕はもうすでに狂っていた。
狂ったことすらわからなくなるぐらいには、狂っていた。