小説
□人に色を付けるなら
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『人に色をつけるなら』
彼は無色だった。
まるで空のように
まるで海のように
無色だった。
そんな海や空は重ね合わさると青のように見える。
彼もそうだった。
まるで青のように見えるのに、その実透明で何の色も持たない無色。
当たり前のようにある海とあって当然の空。
彼もまたどこにでもいるような平凡な人間だった。
当たり前のようにある海は、時には全てを暗い海の底に引きずりこんだ。
あって当然の空は時に、あらゆるものを薙ぎ倒す風と雨を作り出した。
そして、彼も、時として異端とかした。
異様なまでの執着を持って。
彼は海だった。
彼は空だった。
そして、それは逆もしかり。
人に色をつけるなら、彼はきっと無色なのだろう。